内容説明
トッドは明るい性格の頭の良い高校生だった。ある日、古い印刷物で見たことのあるナチ戦犯の顔を街で見つけた。昔話を聞くため老人に近づいたトッドの人生は、それから大きく狂い…。不気味な2人の交遊を描く「ゴールデンボーイ」。30年かかってついに脱獄に成功した男の話「刑務所のリタ・ヘイワース」の2編を収録する。キング中毒の方、及びその志願者たちに贈る、推薦の1冊。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
散文の詞
193
-刑務所のリタ・ヘイワース- リタ・ヘイワースを知らないので、どういう意味があるのかと思っていたら、それを壁に貼ってる事に意味があったのか。改めて考えると30年は長い。 -ゴールデンボーイ- 前半は、各章ごとに日付が書かれていて、規則正しい生活なんだと印象付けられます。ところが、途中から、その辺りが曖昧になってきます。日付を書かないことで、少しずつ狂っていくのが表現されてて、この辺りは、うまいですね。まあ、感動するような内容ではないけど、なんとなく犯罪が露呈しないで欲しと思いながら読みました。 2021/09/27
zero1
134
「刑務所のリタ・ヘイワース」は現代版「モンテ・クリスト伯」。元銀行副頭取のアンディーは、妻と不倫相手を殺したとして30歳で服役。そこにいた調達屋レッドと出会う。レッドの視点と語りで話は進む。アンディーは看守たちの税金対策などで有能さを示す。そしていくつもの驚きが結末に向かって展開する! 映画「ショーシャンクの空に」の原作。 モーガン・フリーマンの演技が秀逸!観て損はない秀作。 表題作は、ナチスの残党を見つけた少年の話。 どちらの話も、人の内側を描いている。 これこそ、まさにキング作品の神髄!2018/10/25
のっち♬
128
『刑務所のリタ・ヘイワーズ』は脱獄物語としては至ってベタであるが、アンディーの受難と不屈の描写がリアルで神秘的な次元の含みを持たせる精巧な語りが見事。表題作は二週間という驚異的な執筆の勢いがスピード感や緊迫感に直に昇華されている。典型的なアメリカ少年の好奇心を起点に、数奇な相互寄生関係を通して映し出される精神的荒廃や禍々しい衝動は迫真。秋冬に比べて社会派度の高い2篇、縁を繋ぐのも信頼なら切るのも信頼。『四季』は著者をホラー大家たらしめるストーリーテリングの付随要素が枠組みに囚われない分だけ顕になっている。2023/02/04
chiru
114
映画『ショーシャンクの空に』の原作『刑務所のリタヘイワース』と『ゴールデンボーイ』の2編。『刑務所…』の映画版は、細かい設定が大きく改変されてる。『ゴールデンボーイ』は、ホロコーストに異常な興味を抱く少年が、ナチス戦犯を脅して、当時の話をせがむ。 ナチスの悪行を語らされる老人が徐々に狂気を呼び起こされ、軍服を着た瞬間、少年との支配、被支配の関係が反転するシーンが見どころ。「刑務所…」では『底しれない忍耐』を『ゴールデンボーイ』では「底しれない心の闇』を描いた傑作。 ★52018/09/07
藤月はな(灯れ松明の火)
111
上原聡氏が描いた幽霊みたいで怖い表紙版で読む。「刑務所のリタ・ヘイワース」はあらすじは語り過ぎでミステリーとして読む楽しみを半減させていると思うが、本当に名作だった。男が女性が番狂わせ的な「アレ」になった時の対処法をしなければならない時の描写に顔から血の気が一気に引いたが、アンディーの知恵と根気と勇気、レッドの友情がなければ実現しなかっただろう。きっとレッドが受け取った手紙には潮風という名の自由の匂いがしたに違いない。その爽やかさの後でどん底に叩き落とす「ゴールデン・ボーイ」収録とはキングは本当に鬼畜だ。2017/02/10