内容説明
五世紀にヤマト王権の内政・外交を主導し、天皇(倭国王)と並ぶ権勢を誇った葛城氏。しかし、高校教科書『詳説日本史』では、脚注で一回登場するのみである。その基盤は葛城地域(現在の奈良県御所市・葛城市他)であり、天皇家と奈良盆地を二分した。葛城氏滅亡後、祖を同じくする蘇我氏は、なぜかその地に執着し、所望したが、推古天皇は拒絶した。一族の女性たちを次々に入内させ、天皇家の外戚となるも、五世紀末頃に忽然と滅亡した葛城氏。その滅亡は『古事記』『日本書紀』には記載がなく、謎とされる。葛城氏の実像と盛衰をあきらかにするとともに、ヤマト王権の実態に迫る。
目次
第1章 葛城氏の誕生
第2章 天皇家と葛城氏の女性
第3章 葛城氏の権力基盤
第4章 遺跡から見る、渡来人との関係
第5章 葛城氏の滅亡
第6章 葛城氏滅亡後のヤマト王権
第7章 神話・神社に隠れた、葛城氏の痕跡
終章 新たな謎と今後の課題
著者等紹介
平林章仁[ヒラバヤシアキヒト]
龍谷大学文学部歴史学科教授、博士(文学)。1948年、奈良県生まれ。1971年、龍谷大学文学部史学科卒業。龍谷大学・堺女子短期大学非常勤講師、龍谷大学仏教文化研究所客員研究員を経て、現職。専門は日本古代史、特に神話・古代宗教・氏族など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サケ太
18
葛城氏は、雄略天皇関連でしか知らなかったが、面白い豪族だった。勢力を広げてきた理由。滅ぼされた理由。時代の流れと変遷、役割の喪失。必然の亡びだったのか。この時代もやはり興味深い。2021/08/30
terve
16
葛城氏は権勢を誇った一族にしてはあまりに謎に包まれています。それは滅亡したことにより資料がないからというのが大きな理由ですが、だからこそ、考察していくしかないわけですね。筆者の考察に関して首肯できるものも多いのですが、時々強引に思える箇所もあります。とはいえ、全体的に考察を中心として論を進めていますので、学問のおもしろさに触れることが出来ます。2019/07/24
月をみるもの
15
娘を天皇の妃に送りこんで外戚として権力をふるう豪族、、と言うと、すぐに思い浮かぶのは蘇我氏や藤原氏。この手法の元祖とも言えるのが葛城氏。渡来人のもたらす最新技術を活用していた点や、天皇家のテロによって滅亡したと言う点も蘇我氏と共通。と言うか、他に先んじてテロによる権力奪取を行った豪族が「大君」となったと言う方が正しいのであろう。。半島で百済・新羅・高句麗が争っていたように、倭国も九州・吉備・大和・出雲などが合従連衡を繰り返していた。その様子が、記紀の記述の裏に読み解かれていくプロセスが、めちゃスリリング。2020/02/22
fseigojp
9
大神、葛城とくればつぎは大伴?2023/11/17
MASA123
7
史実が少ないので、学校の歴史ではほとんど習わなかったけど古代豪族の話は興味ぶかい。本書に記載された葛城氏ゆかりの場所に行ってみたい。すでに訪れたところもあるが、歴史を知って訪ねると、ちがって見えてくるのです。 2021/09/14