内容説明
現在の天皇陵は、誰が、いつ、何を根拠に、どのような方法で決定したのだろうか。本書は、考古学的なアプローチとは別に、近世・近代史の視点から、天皇陵とは何か、という問題に迫る。
目次
序 天皇陵は「聖域」か
1章 天皇陵は本物か―証明法の謎
2章 蒲生君平が求めたもの―『山陵志』を読み直す
3章 幕末に成った神武天皇陵―「聖域」に群がる人びと
4章 明治天皇陵は「過渡期」の制―葛藤と批判
5章 天皇陵を探せ―安徳天皇陵と長慶天皇陵
6章 仁徳天皇陵発掘は許されるのか―地中に眠る「文化財」
著者等紹介
外池昇[トイケノボル]
1957年、東京生まれ。1988年、成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士(後期)課程単位取得修了。現在、成城大学文芸学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ニコン
21
天皇陵というテーマを続けて読んでみました。この本は著者が近世、近代史の史料から天皇陵をどのように、いかなる経緯で特定したのかを概説しています。先の考古学者の本とは違った手法なので、興味深かったです。2014/06/04
うえ
10
天皇陵や巨大古墳にほぼ縁遠い生活だったのだが俄然関心がわいてくる。話のとっかかりとして、柳田と折口が衛士と揉めた話から進めていく。「学問の上では「◯天皇陵」とは呼ばない…それでは◯天皇陵という名称を用いるのはいったい誰なのか…それは今日のいう宮内庁、戦前では宮内省である」「宮内庁は…学術目的であっても墳丘に入っての観察を許していないのである。序でみた、柳田・折口・岡野と聖徳太子墓を護る若い衛士との間の悶着も、この文脈で理解できよう」。なぜ天皇陵を「聖域」として考えるようになってしまったかを考察していく。2022/02/04
雨巫女。@新潮部
9
《私‐図書館》天皇陵って、そんなに重要。私は、もっと解放して、研究した方がいいと思う。天皇陛下は、日本に必要な方だから、軽んじるってことではないから、2012/06/14
いくら丼
8
するする読める。明治天皇陵や安徳天皇陵、長慶天皇陵は、私の直接の目的ではなかったが、天皇陵というものがどのように考えられてきたか、少しわかった。そして、仁徳天皇陵、学術調査へ賛否の状況が、新聞記事でよくわかって嬉しかった。単純に現実的でないから発掘調査をしないとはなるほど。管理のために調査をとの意見は、これらの時点ではなかったのかな? 仁徳天皇陵古墳の柵の向こう側にも、ゴミは落ちているんだよなあ。保護すると言いつつ放置になっちゃいないかと思わなくもない。調査って、知的好奇心を満たすだけではないんだけどな。2023/03/08
nizimasu
4
天皇陵の確定がそもそも記紀や延喜式に頼っているという状況や、考古学と聖地としての存在など天皇陵こそ、日本人の感覚的な曖昧さをもっとも端的に表現したものはないと思った。天皇陵をあいまいに位置づけつつ、先送りにしていくというのは、日本人の思考法そのものではないか。ちょっと斜めからみた視点だけど、古代の人々の思いを馳せるのも面白いかも2012/05/29