内容説明
一八六七年一月、渋沢は、将軍・慶喜の弟、徳川昭武を公使とする遣欧使節団に随行を命じられ、欧州巡歴の旅に出発した。かの地で彼は何を見聞きし、何を感じたのか。それは、新生日本の建設に、どう生かされたのか。
目次
序章 いまなぜ、渋沢栄一か?
1章 将軍の親弟、徳川昭武に随って欧州へ
2章 なぜ、農民出身のにわか侍が選ばれたのか
3章 マルセイユまで、四八日間の船の旅
4章 パリ万国博覧会の光と影
5章 大君の使節、欧州五ヵ国巡歴
6章 「ペルゴレーズ館」での学びの日々
7章 幕府崩壊、帰国へ
8章 隠棲の慶喜のもとで、静岡藩の藩政改革
9章 明治新政府での活躍と欧州体験
終章 いま求められる「論語資本主義」の精神
著者等紹介
泉三郎[イズミサブロウ]
1935年生まれ。一橋大学経済学部卒。事業のかたわら、76年から岩倉使節団の足跡を追う旅を始め、約8年で主要ルートを踏破。その成果をもとに、数々の著作やスライド映像を制作し、96年「米欧回覧の会」を設立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じょくぼ
1
前の方も書いているが、渋沢栄一の人物像をある程度作りあげてから読まないと、表面的なエピソード集にしかならないかもしれない。ただ、逆に、イメージがある程度出来上がった状態で読めば、かなりの部分が「なるほど」と合点のいく内容にとらえられると思う。今、この人が生きていたら、何を考え、何をしようとするんだろう、と、考え込んでしまった。2011/04/11
じょー
1
これは渋沢栄一を知らないとただの欧州経験でしかない。2011/03/27
森田裕之
0
巨人・渋沢栄一に最も大きな影響を与えた青年時代の欧州体験に焦点を当てた本。農民出身の過激な攘夷主義者がひょんなことから敵であるはずの幕府に仕官し、将軍慶喜の弟・昭武の遣欧使節団に随行、若き渋沢はその役割を見事に果たしつつ、当時の欧州の進んだ経済システムを驚きや感動と共に吸収していく。そしてその体験が、幼少から親しんだ論語の道徳観と見事に融合した結果独自の「論語資本主義」とも言うべき思想に結実し、近代日本の礎を築いていく。資本主義がその限界を露呈する今こそ日本が世界に誇る思想として見直されるべきだと思った。2015/03/15
スプリント
0
本書では渋沢栄一の欧州体験が政府と民間での取り組みにどのように生かされたのかが語られています。日本の産業の礎を築いたといえる渋沢栄一のバックボーンの一端に触れることができます。2013/12/23
yucco
0
渋沢栄一の長い人生の中にあった大きなターニングポイントの内の1つである欧州派遣について、大河ドラマの内容を補完する意味で読んでみましたが、栄一の豊かな表現力で綴られた「航西日記」等の引用に触れ、多忙でありながらも多くの事をスポンジの様に吸収していた彼の当時の興奮や感動、そして苦労が良く伝わってきました。個人的に印象に残ったのは父である市郎右衛門との手紙のやり取り。短いエピソードですが、栄一が大きく羽ばたけたのはこの父あってこそなのではないかなと想像しました。2021/07/18