内容説明
建築家原広司が、そのライフワークである世界の集落調査をとおして受けた空間デザインに関する教え100フレーズは、『建築文化』1987年4月号を初出とする。本書は、初出から十年余、それら100のキーフレーズそれぞれに熟成された書下ろしの論考および充実した補注を加え、かつ100集落の写真・図版を添えて構成し、決定版としたものである。
目次
あらゆる部分
同じもの
場所
離れて立つ
すべてのものにすべてがある
なんでもある住居
共同幻想
伝統
秩序
矛盾〔ほか〕
1 ~ 1件/全1件
- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナクマ
37
建築家による世界の集落調査の成果。100の視点、短い箴言を羅列した体裁は『ブッダとの対話』のようでもあり。◉すべてのものは「縮小」するほうが好ましい。「屋根」はすべての混乱を治める。「人影」がない場所をつくれ。「広場」は共同体の制度を表現する。あらゆる部分を「計画」せよ。集落は「物語」である。◉建築家という人たちは面白いなあ。いつもこのように思考するのか。ときに難解で勝手にしろと放りそうになるが、捨てずに手元にあるということはつまりはそういうこと。→2018/12/23
アナクマ
34
いつ読んでも刺激・発見のある本で面白い。少し重いので文庫化希望。◉集落は「物語」である。集落の虚構性が、現実の生活を支える。…おお、こんなところにも虚構論が顔をのぞかせている。◉集落が好むのは、「不動なるもの」ではない。絶えざる変化であり、展開である。…これはどうだろうか、いったん保留しておこう。◉(p.39)個体としての人間は皮膚という明確な境界をもつが、意識は、他者の意識とさだかな境界がない。集落における人びとの意識の共有関係を知ることは、ものをめぐる共有性を知る以上に、ほとんど不可能である。2022/10/18
アナクマ
33
建築家が世界の集落調査から学んだ真髄。「集落は、人間が費やしたエネルギーの総体のかなりの部分を占める」100の要素に100の格言。難しい言葉使いもあるけれど、全てに写真/事例が添えられて具体性があります。◉共同幻想…あらゆる集落を実現してきた。大きな構想…小さな部分によって支えられる。複雑さ…複雑なものは単純化し、単純なものは複雑化せよ。その手続きの複雑さが人の心をうつ。離れて立つ…自立した人間であるとともに、連帯する人間でもあるような、あらゆる単独者が有意味と認められる共同体に。死…死者とともに生きよ。2021/03/10
ばんだねいっぺい
23
気がつけば、集落は、住む人や気候・自然、聖なるもの、高貴なもの、禁忌、地下室、中庭、空中、諸要素を見事に統合した一つの島として、細部=全体としてデザインされている。凄いなぁと思った。2019/03/18
アメヲトコ
12
実家から発掘、1998年刊。72年から97年まで四半世紀にわたる世界各地での集落調査をふまえ、100の集落と「教え」を抽出した一冊。神の託宣のごとき箴言と魅力的な写真に、学生の頃は幻惑されましたが、改めて読み返すと、これはいかにも建築家が書く文章であって、あくまでそのフィルターによって抽出された「教え」であることが分かります。2024/03/11
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