出版社内容情報
遊女屋の娘ゆうと旅役者の福之助が結ばれて十年の歳月が流れた。
そして関西を巡業して廻る一座に様々な苦難がふりかかる--。
ゆうの激しい人生を描く。
直木賞受賞作「恋紅」の続編。
内容説明
吉原の遊女屋の一人娘ゆうが旅役者の福之助に付き従い旅に出てから九年。ゆうは頭取として一座をまとめつつ、唯一の女手としても働きながら多忙な日々を送っていた。名古屋郊外での興行中、一座の女形の牡丹は、近所で開催された撃剣会に出会った後に失踪してしまう。どうやら愛国的政治結社に身を投じたらしい…。そこから、ゆうにとって大切なものが、静かに、取り返しのつかないほどに、崩れていく…。維新以降、数多の矛盾を抱えつつ荒々しく変わりゆく明治の世を舞台に、直木賞受賞作『恋紅』の主人公ゆうの「その後」を描く。
著者等紹介
皆川博子[ミナガワヒロコ]
昭和4年(1929年)、京城に生まれる。1972年、少年向け時代小説『海と十字架』でデビュー。1973年、「アルカディアの夏」で第二〇回小説現代新人賞を受賞して本格的に活動を開始。推理小説、幻想小説、時代小説、西洋歴史小説の各ジャンルを横断して多彩な作品を数多く発表している。日本推理作家協会賞、直木賞、柴田錬三郎賞、吉川英治文学賞、本格ミステリ大賞、日本ミステリー文学大賞、毎日芸術賞を、それぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アーちゃん
55
1990年初刊本、2024年復刊。「恋紅」続編は福之助の一座に頭取及び女房として旅に出たゆうの九年後、名古屋郊外の興行から始まる。時は明治十五年。三人兄弟の一座は長兄の角蔵が東京に残り、弟の金太郎が抜け、さらに立女形の牡丹が政治結社に身を投じて徐々に立ち行かなくなっていく。トラブルを予感させる冒頭から、大阪に流れて以降、愛する人の死に己を失くしたゆうの妊娠と前作とはがらりと変わり悲惨な内容が続く。東京に戻り娘ひさを預けて新しい仕事に従事するゆうの前に現れたのは。ゆうの三十五歳までの凄まじい生に圧倒された。2024/06/23
森オサム
29
「恋紅」の続編。本作は主人公の20代半ばからの10年間が描かれているが、何とも壮絶な人生でした。しかしそれは自分で選んだ生き方、いや、そうとしか生きられない性の人物と言う事か。全く共感は出来ないのは、男女の性差なのでしょうか?、私には分からない。まあ子供より自分のしたい事を優先する、それはそれで少ない話では無いのかも知れませんが。前作は少女時代の物語だったので、主人公が何を考えているのか理解出来ず読むのに苦戦した。しかし本作は、納得は出来ないが理解は出来た。その分読み進め易かったし、この先も読みたかった。2024/12/10
秋良
19
恋紅の続編。吉原を飛び出して旅芸人の一座に加わったゆうの、その後の十年。守ってくれていた福之助が死に、立ち行かなくなって一座は解散する。前作ではどこでも周りの者に庇われ物事の一番醜い部分までは見ずに済んでいた彼女に、一気に厳しい現実が襲いかかる。読んでてイライラすることもあった少女漫画のような展開からの落差に驚く。女興行師として立ち、泥くさくもがく姿は桜というより蓮の花。次の構想もあったようだけど、ここで終わってしまってるのが惜しい。2024/09/24
イシカミハサミ
14
第95回直木賞受賞作、「恋紅」 本作はその続編にあたる。 こちらは名実ともに 遊郭の主人の娘、ゆうが主役。 時代は明治。 激しい時代のうねりの中、 女の身一つ、生き抜く姿。2024/09/28
たけはる
9
前作『恋紅』の続編。福之助と所帯を持ったゆう、三十五歳までの物語。福之助は途中で退場するだろうな~と思いましたが、まさかそういう終わり方とは思わなかった。福之助を亡くしたときのゆうの狂い方が圧巻で、胸がつぶれるようでした。そこから先は苦難の連続ながら、それぞれの出来事を通して女として、母として強くたくましくなってゆく。やっぱりこういう少女の成長物語って好きだ~と噛みしめながら読みました。結局さらなる続編は出てないのかな……残念。2024/07/26