内容説明
川柳は落書きだ!反戦、反対制を貫いた日本のサブカルチャー。
目次
第1章 鶴彬―川柳の軌跡 1924‐1937(燐寸の棒の燃焼にも似た生命;三角の尖がりが持つ力なり;仏像を爪んで見ると軽かった;暴風と海との恋を見ましたか;三角定規の真ン中に住める ほか)
第2章 鶴彬と20世紀―1909‐1938(縮まって女工未明の街を行く;墨を磨る如き世紀の闇を見よ;めらめらと燃ゆは焔か空間か;血を咯けばこれだけ食ったら死ね!といふ手当;肺を病む女工故郷へ死に来る ほか)
著者等紹介
楜沢健[クルミサワケン]
1966年東京生まれ。文芸評論家。早稲田大学ほか非常勤講師。早稲田大学第一文学部卒業。同大学院文学研究科博士課程単位取得退学。プロレタリア文学を研究の中心テーマ、座標軸のひとつに据え、ユニークな文芸評論を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
49
「万歳とあげて行った手を大陸において来た」「修身にない孝行で淫売婦」「神代から連綿として飢ゑている」「これしきの金に主義一つ売り二つ売り」これらの反戦プロレタリア川柳を詠んだ川柳作家・鶴彬(つる・あきら)の入門&評論本。鶴彬は1909年誕生。太宰治や松本清張、大岡昇平と同年である。わずか29年8ヶ月の生涯。その死は特高によるものという疑惑が。左翼川柳ばかりではない。「暴風と海との恋を見ましたか」(格好いい!)、「立禁の札をへし折り夜刈の灯」(尾崎豊!)。著者よりも鶴彬の著作をもっと読みたい。2014/09/22
のうみそしる
3
今まで文芸界からあまり注目されなかった川柳。しかし鶴彬のそれはダダイズムや未来派などと共通する世界文学だった。キャンバスから街頭へ。民衆による反逆、皮肉、穿ちの芸術。「手と足をもいだ丸太にしてかえし」「タマ除けを産めよ殖やせよ勲章をやろう」平成の今またキナ臭い世の中になりつつあるが、この時代に生まれたのが唯一の機会だと意識して生きていかねば。それにしてもいろいろと重複の多い本である。2017/05/03
ねこ太
2
こういう作家がいることも知らなかったし、こういう川柳文化があるのも全く知らなかった。時代背景とか情勢とかとりあえず置くとして、装丁とかすべてとんがった感じがよい。2011/10/20
ずー
0
今の世でも通用してしまうような、権力に対する鋭い批判的視点に痺れた。家父長制とか国家と結びついた生殖イデオロギーに対してノーをつきつけているのが良い。自由律を主張するのはなぜなのかなと思ったが、元々和歌が天皇家や貴族の文芸である以上、五七五の音律というのはやはり天皇制とか日本の「伝統」(とされているもの)とか、それが行き着いた先の植民地主義みたいなのと結びつきが強いから、そういうものを切り離して独立した文芸を志向するとそうなるのだろうなと思った。2022/04/26