内容説明
蕗屋清一郎は、半年間考え続けたある計画を実行することにした。それは、同級生斎藤勇の下宿先の主である老婆を殺害し、隠しためていた大金を奪うことだ。容疑者として同級生斎藤があげられ、犯人として確定したかと思われたが…。担当の予審判事は、もう一人の容疑者として眼をつけていた蕗屋と斎藤の二人に心理試験を行う。ほかに「二銭銅貨」「二癈人」「一枚の切符」「百面相役者」「石榴」「芋虫」6点収録。
著者等紹介
江戸川乱歩[エドガワランポ]
1894‐1965。明治27年10月21日三重県に生まれる。早稲田大学で経済学を学び、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和4年の「蜘蛛男」より娯楽雑誌に長編を連載、「魔術師」「黄金仮面」「黒蜥蜴」など。昭和11年から「怪人二十面相」を少年倶楽部に連載、少年探偵シリーズは晩年まで続く。昭和22年、探偵作家クラブ結成、初代会長に就任。昭和29年、乱歩賞を制定。昭和32年から雑誌「宝石」の編集に携わる。昭和38年、日本推理作家協会が認可され理事長に就任。昭和40年7月28日死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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青蓮
123
「心理試験」「二銭銅貨」「二廢人」「一枚の切符」「百面相役者」「石榴」「芋虫」収録。どの作品も1度は読んだことがあるものばかりでしたが、久しぶりに読んでとても楽しめました。書かれた時代もあってか、懐かしい感じがします。乱歩の、見てはいけないような、ドロッとした背徳的な匂いがする作風が秀逸。探偵小説・推理物もスリルがあって好きですが、私としては「芋虫」のような、エログロ、猟奇趣味的な怪奇小説がお気に入りです。2016/06/14
ころこ
33
猟奇系の『石榴』を楽しく読みました。二人の商売敵・恋敵と正体不明の死体が出てきたとき、直ぐに加害者と被害者が入れ替わっていることを直感しました。横溝の『悪魔の手毬歌』がパクっていますが、それだけではありません。加害者と被害者が再逆転していることと、本作が『トレント最後の事件』をパクっていることが現前の犯人から告白されます。犯人と探偵が事件の解釈を議論し、秘密を知っている作者=犯人が「真実」を告白します。この「真実」とは、真犯人のことなのか、それともパクリのことなのか。探偵小説の批評的な構造になっています。2019/12/21
金吾
22
○名作揃いの一冊ですが、その中でも心理試験は大好きな作品です。物の捉え方の表裏を感じ、面白いです。2022/04/06
CCC
11
七作収録。うち三作のみの感想。「心理試験」ある種の仕合みたいだった。こういう手法は冤罪に繋がる危険性を感じるが、それが当時の段階ですでに指摘されているのが分かって面白い。「二銭銅貨」デビュー作らしい。南無阿弥陀仏を使った暗号は字面はちょっとおどろおどろしい。実態はただの煙幕みたいなものだけど。「芋虫」こちらは絵面がおどろおどろしい。ただ最後はなんだか切なさを感じてしまった。須永中尉の内心をどう読み取るのかにもよるだろうが、案外情感のこもった作品だった気もしてきた。2025/06/20
おくちゃん
11
子供の頃、怪人二十面相を読んでも面白いとは思わず、シャーロック・ホームズとか怪盗ルパンを読んでいた小学生でした。江戸川乱歩をちゃんと本で読んだのは今回が初めて。面白い。他の江戸川乱歩の短編集を読んでみたい。2024/09/24