内容説明
外務省書記官夫人である佳子は、美しく才能豊かな女流作家としても知られていた。そんな佳子の元へ、ある日長文の手紙が届く。ある男からの罪の告白であった…。肝を冷やす“人間椅子”の秘密とは!巧みな構成とスリリングな物語の表題作の傑作短編「人間椅子」、悪女登場でゾッとさせる「お勢登場」、兄と入れ替わった男の錯誤「双生児」、美しくも凄惨な恋物語「人でなしの恋」など短編10編を収録。
著者等紹介
江戸川乱歩[エドガワランポ]
明治27年10月21日三重県に生まれる。早稲田大学で経済学を学びながらポーやドイルを読む。様々な職業を経験した後、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和2年までに「D坂の殺人事件」「人間椅子」「パノラマ島奇談」などを執筆する。休筆を挟んで「陰獣」「芋虫」「孤島の鬼」などを発表。昭和4年の「蜘蛛男」より娯楽雑誌に長編を連載、「魔術師」「黄金仮面」「黒蜥蜴」など。昭和11年から「怪人二十面相」を少年倶楽部に連載、少年探偵シリーズは晩年まで続く。昭和40年7月28日死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
2014年5月1日〜本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
114
面白かったです。身の毛もよだつような怪奇小説の数々。どの短編もホラーを思わせるような落とし方が凄いです。美しく計算された緻密な恐怖感。読んだことのある作品もありましたが、それでも迫るグロテスクさを味わわずにはいられませんでした。2016/05/08
chimako
95
人間の奥底の 暗い色味のエロス。自分では制御しきれない欲望。意識の外で起こる驚愕の事実。表紙絵とともに、何とも気味の悪い短編の数々。特に「人間椅子」椅子だと思って座っていた所が、実は見知らぬ男の膝の上だったなんて気持ち悪いにも程がある。この物語を銀河万丈さんがどのように読んでくださるのか、どんなにゾワリとするのか楽しみです。2017/09/06
青蓮
71
人間椅子、お勢登場、毒草、双生児、夢遊病者の死、灰神楽、木馬は廻る、指環、幽霊、ひとでなしの恋、10編収録。どの話も昔読んだことがあるけれど、とても楽しめました。改めて乱歩はやはり短編の名手だと思います。乱歩の描くエログロ趣味、どろっとした暗黒の世界は薄気味悪さと共に、人間の持つどうしようもない哀しさが込められているような気がします。2015/05/08
たーぼー
53
春陽堂の乱歩シリーズはこれで二冊目。子供の頃に読んだ『人間椅子』は只々不快でしかなかった。今では『心地よい気色悪さ』とでもいおうか。この見下げ果てた陰湿な手段と用意周到さ。しかしそのアイデア、感受性に共感する部分も少なからずあるのが正直なところ。それは精神が内に内に籠るほどに、虚弱な状態であるほどにその思いが顕著になる。他作品(特に『黒蜥蜴』の美術館)にも同じことがいえるが、悪徳と単に片付けられない美と正常と不安定の表裏一体の姿をまざまざと見せつけられるから乱歩の感触は琴線に生温かく敏感に触れてしまう。2015/10/22
金吾
33
江戸川乱歩の少しオドロオドロした部分がある独特の世界が楽しめます。特に「人間椅子」は佳子が受けた猟奇的衝撃が伝わり好きな作品です。2022/06/10