内容説明
昭和16年、春陽堂書店は初めての『人形佐七捕物帳』全5巻を刊行した。昭和48年には『人形佐七捕物帳全集』全14巻を春陽文庫より刊行。150篇を収録し愛読されたが、近年、研究者たちにより『人形佐七捕物帳』は全180篇と確定した。ここに綿密な校訂を施し、初めて発表順に決定稿を集成。面目を一新した『完本 人形佐七捕物帳』全10巻をお届けする。横溝正史次女野本瑠美氏の回想『人形佐七は横溝家の天使』を全巻連載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
57
全集第四巻。個人的に本巻に収録されている作品は粒ぞろいだと思う。白眉は何といっても「百物語の夜」。トリックは一見してあの作品の本歌取りとわかるのだが、それと百物語という怪奇趣味、怪談めいたもう一つのトリックを組み合わせる事で忘れがたい印象を残すことに成功している。他にも俳句を暗号として使う江戸趣味横溢した「お玉が池」や、サイコめいた怪人が縦横に活躍する「ほおずき大尽」等、名作が目白押し。佐七が上様の御前で大活躍する「鼓狂言」もまたいいな。推理と活劇と人情が上手くマッチした捕物帳、今回も楽しめました。2021/04/15
くさてる
16
人形のようにいい男だから「人形佐七」。何回も書きますが、わたしはこの由来が気に入っているのです。そんないい男の佐七が、江戸に起こる難事件や不思議な事件を解決していく捕物帳。今巻も、安定の内容で面白く読みました。そこは横溝なので、エロもグロも、なんともいえないえぐみもあるのだけど、陰惨さはなくて、後味が良いのです。なんと上様の依頼で大奥に入り込む「鼓狂言」はじつに楽しかった。2021/08/12