内容説明
芥川賞は、当時の新人作家による優れた作品集だった。戦前・戦中の芥川賞候補作から「いま読んでも面白い作品」を全14篇掲載。雑誌掲載時の太宰治「逆行」、戦後、作品が一度も書籍化されたことのない村田孝太郎など、読むことすら難しかった幻の作品も収める。
著者等紹介
鵜飼哲夫[ウカイテツオ]
1959年、名古屋市生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。1983年、読売新聞社に入社。1991年から文化部記者として文芸を主に担当する。書評面デスクを経て、2013年から編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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チェアー
9
戦前・戦中の小説は、実生活をリアルに描いたものが評価されていたことが分かる。収穫は「鶏」。雄鶏、雌鳥、ヒヨコの観点から、それぞれの動き、気持ちを描いた怪作だ。芥川賞の功績は、受賞作を選ぶこともさることながら、候補作を選ぶという周辺への効果も大きかったのだと思う。わたしなら受賞作と候補作のどちらがいいか、なんて決められない。戦後編にも期待。2020/07/27
5〇5
8
「戦前・戦中の作品集だけど、選ばれただけあって多彩な内容で面白いよね」 「芥川賞に選ばれるには、上手なだけではダメみたいね。未熟であっても、パッションとかチャレンジとか何らかのエネルギーが必要ってことかしら」 「別の意味で、落選した太宰治の賞への執着エネルギーは、なんとも凄まじいよね」 「そうね、そのあたりは解説で詳しく書かれてる。そこが彼のすごさかも。表紙になってるくらいだし」2020/06/23
田中峰和
5
三島が太宰嫌いだったのは有名だが、芥川賞受賞への執着、日頃の言動などを見れば当然のような気がする。また、選考委員の川端康成の選評も太宰をからかっている様で面白い。当時は候補には1回しかなれない規則を知らず、しつこく絡む太宰も生に執着すればよかったのに。掲載の「逆行」も自意識たっぷりのピエロ像が鼻につく。埴原一亟の「下職人」が良かった。洋服の下請け職人の生業を通して、当時の職人の苦労と同僚への複雑な対抗意識が描かれる。大卒のインテリ修造は親方の職人気質に抵抗する。叩上げの音吉との対抗意識と葛藤も楽しませる。2020/08/14
はな
4
◯逆行(太宰治)/◯中央高地(宮内寒彌)/神楽坂(矢田津世子)/◯梟(伊藤永之介)/春の絵巻(中谷孝雄)/◯南方郵信(中村地平)/隣家の人々(一瀬直之)/俗臭(織田作之助)/◯河骨(木山捷平)/分教場の冬(元木国雄)/祝という男(牛島春子)/◯鶏(村田孝太郎)/◯下職人(埴原一亟)/◯文字渦(中島敦)2023/08/06
本命@ふまにたす
3
戦前、戦中期に芥川賞の候補になった作品から編まれたアンソロジー。どれも読み応えを感じて、なるほど「傑作」である。文章に古さを感じさせないものが多いのも魅力。2022/08/15




