内容説明
出羽三山といえば羽黒山・月山・湯殿山を指すが、その昔は山伏修行の聖地の一角を葉山が占め、長恵院では奪れた葉山修験道の復興を悲願としていた…(出羽即身仏伝奇)。会津の数ある名産品のひとつに「絵蝋燭」がある。蝋の生産は、藩の貴重な収入源として専売制の下に急伸したものだが、絵蝋燭の開発のうらに…(「会津絵蝋燭奇談」)。―その他、浮世絵師歌麿の「幻の名作」異聞、日本酒造りの「杜氏」秘史、そして木曽の「娘宿」哀話という5話構成になる本編は、著者の曽祖父の弟にあたる竹邑亭雀子と号する文人趣味の人物が遺した草稿を現代文に書き直し、いささかの潤色を施して再話したものというが、1話1話が丁寧な細工物を見るような感興をそそる情趣深い佳編である。