内容説明
松平定信の時代。元奥祐筆組頭佐伯右馬之介は隠居の身。だが、肉体も精神も枯淡の域にはほど遠い。一年前に妻は死去し、長男が右馬之介の跡目を継いでいるが、次男は水茶屋の女と出奔して行方が分からない。右馬之介には田沼意次失脚をもくろみ、一揆・打ち壊しの計画を策謀した過去がある。光格天皇が父典仁に尊号宣下を迫り、旧田沼側は政権回復を目指して行動を起こし、朝廷の隠密隼人衆も動き出している。人間世界の因果関係がからみあい、謎が謎を呼ぶ。謎の人物老師。おはるも、祇園とうふ屋の藤七も、事件に関与しているらしい。右馬之介が好感を抱くかなは、打ち壊しで倒れた津軽屋の娘であった。