内容説明
子ノ刻、水戸藩下屋敷の長い土塀の暗闇から、女を担いだ黒覆面がめーっと姿を現した!白羽二重の着流しに雪駄履きで酔余のそぞろ歩きを楽しんでいた天下無宿の素浪人松平十四郎がその光景を見咎めた!そして、白光を潜って黒覆面侍の一人を仕止めたが、男は飛来した毒小柄に刺され、“闇姫さま…”の謎の言葉を残して落命した!松平十四郎はその侍の妻女を訪ね、その持ち物である財布の中にあった“十字架”から、この事件の裏に意外や二十年前の島原ノ乱につながる謎が隠されていることを突き止めた!闇姫さまはその十字架の奪回と、この事件に首をさしはさむ浪人の打倒を厳命した!―錣頭巾に光る十字架を縫いつけた一団とは!?闇姫の悲願と素浪人との命運…は。