内容説明
「鳴り響く神学」の宇宙。『インヴェンション&シンフォニア』に込められた“感謝と平安の祈念”。諸作品に意図された聖書の世界とその神学的意味、特定のフィグーラが多彩に駆使された独自の作曲技法を解き明かす。
目次
1 『インヴェンチオ』の地平(ホ長調インヴェンチオと「喜び」のフィグーラ;訪れ来るものによってもたらされる「喜び」―「到来」とは何か;ホ長調インヴェンチオの構造)
2 バッハのキリスト論―『マグニフィカート』BWV243a再考(BWV243aのテキストを読む;バッハのマグニフィカート;「エッサイの若枝の花」に関する補註;待望する魂―「聖なるもの」の到来)
著者等紹介
丸山桂介[マルヤマケイスケ]
1943年、東京生まれ。日本大学芸術学部音楽科卒(専攻・楽理)。ハンブルク(1982年)、シュトゥットガルト/ライプツィヒ(1986/87年)でバッハ、並びにベートーヴェン研究。現在はフリーのバッハ研究。私設講座の「バッハの学校」を主宰。各地での講演等を通じてバッハの音楽とそれを支えるヨーロッパの精神史の関係についての講義を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
57
丸山先生の本はいつも読むのに難渋する。本書で分析されているのは、ホ長調のインヴェンションとマニフィカート。確かに、ホ長調のインヴェンションは、リピートを持つ特殊な構成で、二つの声部が十字架を切るように交差する旋律線が宗教的な作品だから、旋律のフィグーラを他のカンタータ(特にBWV.63)と照合することによってバッハの神学的メッセージを突き詰めようとする著者の分析的なアプローチに適していると納得する。ただ、ゲマトリアを通じた解釈については、それがどれほど有意義なのか理解できないというのが正直な感想でもある。2020/10/01