内容説明
「その人の生き方すべてが音楽にあわられる」「どう弾くかだけでなく、どう生きるかをわたしは教えているの」―。こうした信念と、昔ながらの筋金入りの教授法“スザーツカ・メソッド”をもとに、自分のあらゆる情熱、精力を注ぎこんで厳しく生徒を指導する女性教師と、彼女に畏敬の念を抱きながら、師の芸術的探求と次第に周囲からおしよせるコンサート・ピアニストという商業主義的誘惑とのはざまで揺れて、やがて独立していくことになる天才少年、さらにその母親、アパートの住人たちとの関係を、時代の移り変わりにさらされるロンドンの古アパートを舞台に描いた〈音楽が聞こえてくる〉人間ドラマ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
古本虫がさまよう
4
訳書は1992年の刊行。ざっと30年前だ。映画は知らない。スザーツカに「見初められた」11歳の少年マーカス。レッスンは金曜午後と土曜の朝の二回。自宅からの往復はもったいないということで、なんと彼女の家に金曜夜は泊まることになるのだ。夕食と朝食付き……。フフフ? といった誘惑モノではなく真面目な作品。ともあれ「葛藤」だらけのピアノ人生が綴られた本でした。2021/04/29
