出版社内容情報
いまからおよそ百年前、1920年代から30年代前半(すなわち大正?昭和戦前期)は、日本が西洋音楽の単純な模倣の段階を脱し、自文化の表現方法として創作活動に用いだした時期である。西洋音楽を積極的に取り込みつつ、それを自分たちのものとして血肉化し、あるいはそこに独自の解釈を施し、さらには新しい創造へと繋げていくことも盛んに行われるようになっていた。
ただし、そうした解釈や創造の取り組みは、決して直線的あるいは均一的だったわけではない。その過程では様々な個人や集団によって、音楽が意図的に誤読されたり、都合良く取捨選択されたり、抜本的に改造されたり、部分的に拒絶されたり、交渉や打算の対象に用いられたりもしてきた。本書はそうした、時にいい加減でちゃらんぽらんで猥雑だがしかしバイタリティに満ちていた時代の種々の音楽実践を、個人・集団間の多様なせめぎ合いの過程のなかで描いていく。
内容説明
西洋の模倣を脱しつつあった時代、ひとびとは音楽とどう向き合ってきたのか。創造性あふれる多様なせめぎ合いの過程を描く!受容から創出へ、混淆する文化のダイナミズム。大正後期から昭和初期、一九二〇~三〇年代の音楽実践を種々の事例から検証。
目次
第1章 音楽教師としてのラスカの歩み―ウラジオストク~宝塚音楽歌劇学校~神戸女学院(根岸一美)
第2章 大澤壽人の外なる西洋 内なる日本(生島美紀子)
第3章 新しい歌の生まれる時―由木康と津川主一による子供のための賛美歌創作(山本美紀)
第4章 近代化する仏教教団と宗歌(山口篤子)
第5章 “城ヶ島の雨”の普及プロセスとその社会的イメージ(井手口彰典)
第6章 “感動”の言語化への道のり―西洋楽語の翻訳と、出発点となった出島でのオペラ上演(一八二〇)(山田高誌)
著者等紹介
井手口彰典[イデグチアキノリ]
立教大学社会学部教授。1978年、広島県生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了、専門は音楽社会学。単著に『ネットワーク・ミュージッキング:「参照の時代」の音楽文化』(勁草書房、2009年、第25回テレコム社会科学賞奨励賞)、『童謡の百年:なぜ「心のふるさと」になったのか』(筑摩書房、2018年、第49回日本童謡賞特別賞)
山本美紀[ヤマモトミキ]
青山学院大学教育人間科学部教授。兵庫県生まれ。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。専門は音楽学・音楽教育学。日本ウェスレー・メソジスト学会会長。日本賛美歌学会副会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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