内容説明
設計主義に見られる人間の傲慢を批判し、相互作用による自生的秩序を重視するハイエクの孤高の思想。グローバル化・インターネット化で知の分散・共有化の進む現代に必読の書。
目次
序論 ハイエクはなぜ分かりにくいのか?
第1章 設計主義のなにが問題なのか?
第2章 自由主義の二つのかたち
第3章 進化と伝統は相容れるのか?
第4章 法は社会的正義にかなうべきか
終章 現代思想におけるハイエク
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
1963年、広島県生まれ。東京大学総合文化研究科地域文化研究博士課程修了(学術博士)。現在、金沢大学法学類教授。文学や政治、法、歴史などの領域で、アクチュアリティの高い言論活動を展開している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
31
著者はハイエクの主張が当たり前のことを当たり前に表現しているだけだといいますが、冷戦が歴史になり文脈が通じない世代が出現してきた現在には改めて見直されても良いのではないでしょうか。道徳的にみえる集産主義が含意している暗黙の前提を明るみに出し、そこから帰結される予測を批判することを通して自由の本質を明らかにしていきます。デカルト的合理主義から導き出されるユートピア思想も自由からは遠いものだとして批判します。設計主義的性格を持っているとして功利主義からは遠い存在ですが、なぜかネオリベだと認識されているのではな2021/01/07
朝ですよね
3
ハイエクの集産主義批判は有名だが、本書はその批判内容よりも思想史的な背景を掘り下げている(設計主義的v進化論的)。自由主義と親和性の高い個人主義についても、慣習と離れる設計主義的な個人主義(偽)と慣習により民主主義を制限する個人主義(真)があることを指摘する。自生的秩序はヒュームの基本的自然法(所有の安定、同意による財産の移転、約束の履行)のような原則が消極的にテストされ発生するもので、カント的な個人の理性が合意を通して普遍性を持つものではない。現代では、憲法自体は権利の根拠ではない、とは想像しにくい。2022/09/15