出版社内容情報
中国近代文学の第一人者である魯迅は、日本の教科書でも取り上げられ、多くの人がその名を知っている。しかし実際に作品を読んだことのある人は少ない。本書は魯迅の代表作品を、文学の知識や素養を踏まえながら解説し、今こそ問うべき「文学の意義」に迫る。
目次
第1章 文学の(不)可能性に向かって―『いい物語』を読む
第2章 エクリチュールと記憶の弁証法―『吶喊・自序』を読む
第3章 啓蒙の声を「翻訳」する―『狂人日記』を読む
第4章 希望の政治学―『故郷』を読む
第5章 他者の「面影」―『無常』を読む
第6章 個体・歓待・共同体―『村芝居』を読む
第7章 我々は如何に許しを乞うべきか―『凧』を読む
第8章 非政治的政治へ―『阿金』を読む
著者等紹介
王欽[オウキン]
1986年、中国上海生まれ。2017年、ニューヨーク大学比較文学部にて博士号(Ph.D.)取得。現在、東京大学大学院総合文化研究科准教授。専門は近代中国文学と批評理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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湯豆腐
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魯迅の作品を周辺情報抜きにテクストそのものから精読していこうという意図が一貫している論文集。魯迅を読むことへの参加を呼びかけるタイトルですが、入門書ではなくかなりヘビィな章もあります。私が好きな『吶喊』の『自序』『故郷』『村芝居』などが取り上げられていてよかった。日本語の訳文に意訳が多いとされる竹内好訳を採用しているのが本の趣旨的には意外でもあり、やっぱ魯迅は竹内訳だよなという納得もあり。『韋素園君を憶う』の、記憶を庖丁でそがれた魚の鱗に例えてみせるシーンのような、魯迅×竹内訳の気張った感じが大好きだ。2023/06/13
オオタコウイチロウ
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「彼の文面を実直に、丁寧に読んでいこう」とすればするだけ、ほんとうは、この国で魯迅が「読まれていない」ことの原因を「テクスト」外に求める必要は無くなるのではないか。「暗いなあ」「ツマラナイ」の一言を認めているようで、認めていない/られないようなところは、筆者自身がエリート中のエリートだが、だからこそまったくの淡白さから逃れられない(日本の学部生のような)、そして筆者自身がそれに気づいてながらも、自身ソノモノとして抱え込めない(それさえ筆者はわかっている)ことと二重写しであるように思う。筆者は悲しんでいる。2023/06/12