出版社内容情報
荒廃した墓場に家を建てて住み始めたヒジュラーのアンジュム。家はやがてゲストハウスとなり、そこでは著者の幻影とも思われるティロー、そのパートナーのムーサーなど、様々な傷を抱えた人々の人生が交錯する……。首都の抗議運動やカシミールでの紛争など、現代インド史の出来事を寓話的に織り交ぜ、凝り固まった世界の周縁で生きる人々の姿を詩情あふれる文章で描く。『小さきものたちの神』でブッカー賞を受賞した著者による20年ぶりの新作長編小説。(解説:拓 徹)
(Arundhati Roy, The Ministry of Utmost Happinessの邦訳)
たった一冊の本に、これほど多くの苦悩、喜び、愛、戦争、死、生、そして人間らしさが詰まっている。何度も人生を歩んだような気分になる一冊。――アニータ・フェリチェリ(『L.A. リビュー・オブ・ブックス』)
愛の描写には映画のような雰囲気があり、真の哀愁と深い感情を伴っている。〔…〕ロイの才能は大きな叙事詩ではなく、個人的なものに対する感性にある。詩的な描写、そして愛と帰属という複雑な方程式を巧みに描き出す能力に長けているのだ。――ミチコ・カクタニ(『ニューヨーク・タイムズ』)
過去20年間のインドを描いたこの親密な叙事詩は見事だ。政治的でありながら説教臭さはなく、感情に満ちつつも皮肉を帯び、詩的でありながら精緻な筆致が光る――『テレグラフ』