出版社内容情報
1945年、日本占領下のマラヤでは少年たちが次々と姿を消し始める……。日本軍のスパイに協力した主婦セシリーと、その家族に起こった数々の悲劇を虚実を交えながら圧倒的な筆力で描く。20ヶ国以上で刊行決定、発売前から話題を呼んだ衝撃のデビュー作。
内容説明
1945年、日本占領下のマラヤ(マレーシア)では少年たちが次々と姿を消し始める…。日本軍のスパイに協力した主婦・セシリーと、その家族に起こった数々の悲劇。大胆な想像力を駆使して新たな視点から戦争を描き、発売前から世界中で話題を呼んだデビュー作。
著者等紹介
チャン,ヴァネッサ[チャン,ヴァネッサ] [Chan,Vanessa]
マレーシア出身、ブルックリン在住。『ヴォーグ』『エスクァイア』誌などに作品を発表する。2024年に刊行された長編デビュー作『わたしたちが起こした嵐』(Marysue Rucci Books/Simon&Schuster)は20ヶ国以上で刊行が決定し、発売前から大きな話題を呼んだ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
38
歴史上ずっと勝者であれば、文句なしに英雄視されたであろうが、太平洋戦争において、敗者であり侵略者である日本人を魅力的に描くのは、長い間文学の世界で禁忌だった。しかし最近になって『夕霧花園』のような作品も登場してきた。太平洋戦争前に起こった「アジア人のためのアジアを作ろう」という大東亜共栄圏構想は、それなりに支持する者もいた。しかし日本は欧米の軛から外した後、それらの国の支配を狙っており、最終目的が植民地化に過ぎないという意見もある。本編では、戦争の最中、アジアの盟主日本に惹かれた人たちが描かれる。2024/08/14
ori
13
日本占領下のマレーシア(当時はマラヤ)で、日本人スパイを好きになった女性セシリーが彼に協力する。その後彼女や家族に起こる様々を描く小説。戦争下という極限の環境で起こる人間の感情や追い込まれた時の行動が生々しい。これは現在もウクライナやガザで起こっていることでもある。セシリーや彼女の娘達目線からのフェニミズムやシスターフッド要素もある家族の大河ドラマでもある。当時の日本軍について、またマレーシアへの理解を深めるあとがきの解説もとても良かった。2025/03/16
グルラビ
5
日本占領下のマレーシアのある家族の小説。1930年代のイギリス統治下、1945年の日本統治下と時代を行き来して物語が進む。占領下の生活の悲惨さ、残酷さ、絶望感が生々しい一方で、物語としての仕掛けも素晴らしく、ページを繰る手が止まらなかった。日本軍の残虐性に目を背けたくなるが、史実や時系列はともかく、ある程度これに近い事はあっただろうと想像できる。歴史修正主義者はこの手の本は気に入らないだろう。女性目線の様々な描写は、戦争文学であるだけでなくフェミニズムの要素も感じられる。息をもつかせず読ませる力作。2024/08/07
めーてる
2
マレーシアで日本軍が行ったことを、侵攻前から敗北まで、とあるマレーシア人一家の視点から記した本。夫を裏切って日本人と通じるスパイになる母親を、この人のせいで世界中、国中、家庭内に嵐が起きたというのに、何故か責められない。2025/02/11
伊戸
2
我々の住む日本という国が他国であるマラヤという土地にどのように介入し、どのような影響と人々の人生を生み出してしまったかを痛切に感じた。 社会問題としてあげられる戦争の爪痕をこんなにもリアリティを持って想像したことは無かった。2025/01/05