内容説明
西欧との対決、宗教と文学の相剋、悪と聖性の探究など、日本文学史に特異な位置を占める遠藤文学の生成と変容の深奥を、カトリックの視点も踏まえつつ解明する力作評論!初期評論から最新作『スキャンダル』まで。
目次
第1章 非情なる凝視―初期評論
第2章 初期小説の世界『白い人』『黄色い人』まで
第3章 方法的実験―『青い小さな葡萄』より『海と毒薬』
第4章 自然との確執―『火山』
第5章 西欧との対決―『留学』
第6章 見出された基督―『沈黙』
第7章 内奥の真実―『沈黙』以後
第8章 深き渕より―『薔薇の館』『死海のほとり』
第9章 二つの王国―『侍』
第10章 闇からの呼び声―『私の愛した小説』『スキャンダル』
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
cineantlers
3
「予め用意された救いは真の救いではない」「遠藤周作の文学作品が、何を私たちに語りかけてくるかを考えようとするこの時、批評家としての私はそこで自分を理解の魔(デモン)に明け渡すという前提を得ておかねばなるまい。」信仰は常に揺れ動くものであるから遠藤周作は無神論者にならなければ読めないのだ。戦争に敗れ、江戸初期の幕藩体制下と、明治維新直後の被植民地的視野に日本が再び落ち着いた時、遠藤周作はイエスを想起することで日本でも西欧でもないイエスの故郷である砂漠から両者を第三者視点から見ることが出来たのだ2022/12/08