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内容説明
100%信頼できる人はいない。だからうまくいく。一攫千金を夢見て香港に集まるタンザニア人。彼らの日常は、まさか!の連続。既存の制度に期待しない人々によるセーフティネット、信用システム、シェア経済とは。可能性に満ちた社会がここにある。
目次
序章 「ボス」との出会い
第1章 チョンキンマンションのタンザニア人たち
第2章 「ついで」が構築するセーフティネット
第3章 ブローカーとしての仕事
第4章 シェアリング経済を支える「TRUST」
第5章 裏切りと助けあいの間で
第6章 愛と友情の秘訣は「金儲け」
最終章 チョンキンマンションのボスは知っている
著者等紹介
小川さやか[オガワサヤカ]
1978年愛知県生まれ。専門は文化人類学、アフリカ研究。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程指導認定退学。博士(地域研究)。日本学術振興会特別研究員、国立民族学博物館研究戦略センター機関研究員、同センター助教、立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授を経て、同研究科教授。『都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌』(世界思想社)で、2011年サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
129
4年前の話題作を今頃読む。なるほど面白い。香港で、母国とのビジネスを仕切るタンザニア人のボスを観察した小川先生渾身のフィールドワーク。「誰も信用しない」ことを掟とする世界で、誰にでも開かれた互酬性を基盤にした奇跡的なビジネスモデルがそこにある。市場経済に互酬・贈与交換・シェアの論理を組み込み、ICTの力で不特定多数のユーザーを含む開かれた仕組みへと変化させようと模索する現代の資本主義が、信用を計量する格付け・評価システムによって、却って排他性を強めてゆく中で、タンザニア人の価値観は多くの示唆に富んでいる。2023/10/16
アキ
123
ペニンシュラホテルからほど近い彌敦道沿いの重慶大厦。昼は中国系の路上商人で賑わう観光客向けの場所も、夜になるとタンザニア人たちがたむろし始める。チョンキンマンションのボスことカラマは、二人の妻がおり、若いガールフレンドも婚外子もいる香港での難民認定者。10年近く香港でビジネスをして暮らす。著者は彼とその仲間たちとのビジネスをシェアリング経済として人類学の視点で内から捉える。あまりに金を無心されるため、全財産を配り、彼らのネットワークに頼り生きてみた時の感覚が、現代の日本では味わえないものであった。2023/05/04
ヲム
123
自分自身、4年前に香港のチョンキンマンションに泊まり、アフリカ人やインド人と仲良くなって酒を酌み交わした経験があるので、実際に毎日仲間とつるんで遊んでいるように見えた彼らが、何の仕事をしているのか物凄く気になっていました。 なので本作は、その種明かしをしてくれていて、凄く興味深く読みました。次回作とかあるのなら、チョンキンマンションのインド人のボスバージョンも書いてもらいたいです。2020/05/11
どんぐり
99
チョンキンマンションに長期滞在しながら、アフリカ系の顧客と香港の業者の間に立って中古自動車や中古車部品、中古電化製品を売買する香港のタンザニア人ブローカーたち。そこに著者が住み込んで、経済人類学の視点から彼らの闇ビジネスをフィールドワークしたノンフィクション。彼らがつくりあげたタンザニア香港組合とコミュニティ内の「開かれた互酬性」、不確かな人間関係に曖昧なネットワークのなかでモノやサービスが回っているのがなんとも不思議である。2022年、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2022/06/05
sayan
74
自分の「ついで」を軸に助け合う香港のタンザニア人。文化人類学の研究で赴いた香港で、タンザニア人にお金をせびられた著者。憤り「有り金すべて持っていけ、でも明日から自分をみんなで養え」と啖呵を切ったら見えてきた分配経済に即した彼らの強かな生き方。贈与や再分配の好循環/悪循環にも言及し、下地となる本書主人公の「ボス」のストーリーは情けなさと強かさが共生する。「私があなたを助ければ、(あたなではない)誰かが私を助けてくれる」と「偶発的な支え合い」と「ついで」哲学の魅力と可能性を本書は存分に示し、没頭感を楽しめる。2021/10/22
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