内容説明
待つことのなかに求めることのなかに神はいるのかもしれない。世界を充たす恩寵のことば。
目次
手紙(洗礼のためらい;洗礼のためらい・追伸;出発の決心;霊的自叙伝;知性の使命;最後の思い)
論文(神への愛のために学校の勉強を活用することについての省察;神への愛と不幸;はっきり意識されない神への愛の諸形態;「主の祈り」について;ノアの三人の息子と地中海文明史)
著者等紹介
ヴェーユ,シモーヌ[ヴェーユ,シモーヌ][Weil,Simone]
1909年生まれ。フランスの思想家。リセ時代アランの教えをうけ、哲学の教職についたが、労働運動に深い関心を寄せ、工場に女工として入り8ヶ月の工場生活を体験。36年スペイン内戦では人民戦線派義勇軍に応募。40年独仏戦のフランスの敗北で、ユダヤ人であるためパリを脱出。その頃キリスト教的神秘主義思想を深める。42年アメリカに亡命、自由フランス軍に加わるためロンドンに渡るが、病に倒れ、43年衰弱死する
渡辺秀[ワタナベシュウ]
1916年生まれ。上智大学名誉教授。2000年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いやしの本棚
14
霊的な告白を含む書簡六通と、神の愛についての論文とで構成されている。『カイエ』の中で断片的に考察されているキリスト教的な部分が纏められていて、『カルカソンヌの一夜』に収録された、ヴェイユのブスケへの苛烈な書簡の背景にある思想がよく分かる。「完全に純粋なもの」に向かう、一個の、白熱した、美しいつよい魂。けれどもそのつよさを裏返すと、劣等感や惨めさに囚われたであろう一人の女性の姿が見える。彼女が光なのではなく、光を望むものであるところに、共感する。ヴェイユはほんとうに稀有な存在だと思う。2017/10/09
すみ子
3
シモーヌヴェイユ晩年期の手紙と論文集。フランスを離れてアメリカやロンドンにいた頃の彼女の考えがまとめられている。世界大戦によって過酷な運命に翻弄されながらも、彼女が神への愛を失わなかったこと、最後までなおも「神を待ち望む」、そういう姿勢であったことに、彼女の清らかさ、強さを感じる。2017/06/16
兎乃
3
シモーヌ・ヴェイユの死後に出版された、書簡集と論文を収録。タイトルの「神を待ちのぞむ」は聖書原典(古ギリシャ語)の「エン ヒュポメネ」から。このヒュポモネ(単数主格、「耐え忍ぶ」「希望を失わずにじっと待つ」)は、シモーヌの好きな言葉の一つ。徹底的に集団的なものを排除し個に回帰。そして、そこにとどまらずに個さえも否定。生命の自己否定の中に退去した神が開示され、真の光と真の沈黙が時間を超越した美として顕現。言語を絶する虚無と孤独の中で「tout est bien」 34年の短く深いシモーヌの人生を思う。2012/04/05
呼戯人
2
シモーヌ・ヴェイユの注意力論は傾聴に値する。注意力こそ学業の中心的力であり人間の認識における基礎であるというヴェイユの確信は、私たちに多くの思考の材料を与えてくれる。ヴェイユはその生涯に3度、神秘的な体験をしており、この接神体験により神の実在を信じていた。この清浄な魂に触れると私たちの心も洗われる。2015/04/04
小早川
1
手紙、論文2020/03/05




