出版社内容情報
現代言語哲学の歴史を飾る偉大な哲学者たちの最重要論文を、日本が誇る研究者たちの名訳で贈るアンソロジー。
内容説明
フレーゲとともにパラダイムシフトした言語哲学は、論理学をモデルに言語一般を考察する基本姿勢のもと、さまざまな批判を吸収しつつ豊かな成果を生み出してきた。その誕生と発展を、いずれも巨大な反響を呼んだ古典的論文によってたどる。
目次
第1部 言語哲学の誕生(意義と意味について(ゴットロープ・フレーゲ)
表示について(バートランド・ラッセル))
第2部 指示をめぐる謎(指示と確定記述(キース・S.ドネラン)
Dthat(デイヴィド・カプラン)
名前の因果説(ガレス・エヴァンズ))
第3部 可能世界と命題的態度(偶然的でアプリオリな真理と固定指示子(キース・S.ドネラン)
量化子と命題的態度(W.V.O・クワイン)
信念のパズル(ソール・A.クリプキ))
著者等紹介
松阪陽一[マツサカヨウイチ]
1964年生まれ。現在、首都大学東京人文科学研究科大学院准教授。専門は言語哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
34
14
一般に学問の世界では理系と文系の分断が著しいが、哲学の世界では大陸系と英米系の分断があるとされる。大陸系の哲学者が言語について述べようとすれば、やはりヘーゲルとハイデガーを参照するのがふつう(アガンベンの『言葉と死』はその典型)。一方英米系の「分析」哲学で絶えず参照される重要論文が集められているのが本書。後続の論文が前出の論文を参照し、そこから議論が作られるので、この界隈に疎い読者にも案外読みやすい優れたアンソロジー。カプランの「Dthat」とかおもしろかった。バンヴェニストでいいじゃんとは言わない。2016/12/21
しお
2
言語哲学の根本問題であるところの(固有名の)「指示」について論じた論文を集めた本書が非常に優秀なアンソロジーであると言えるのは、各論文がその前後に並ぶ論文の応酬となるように構成されており、フレーゲ「意味」論文以後の哲学者がいかなる論戦が行ってきたかをつぶさに見ることができる点にある。単に言語哲学の関心について知りただけいなら青色本を読めば十分であるが、(「指示」の問題を通して)自然言語の意味論に関して哲学者が利用する手続きや方法論を(「意義」の次元だけでも)理解しようと欲するなら本書を読むのが有用である。2020/07/27
rinv0925
1
分析哲学ゼミで使用中。2016/09/28
の箱
0
Dthat: 全然わからんがこれは二次元意味論ってことなのか?Dthatはこの場の指示対象を選び出して可能世界ごとでもその対象が評価を受けるが、the spyは発話のこの場ではDthatと同じ対象を選ぶものの可能世界ではその世界ごとにそこでのthe spyが選ばれて評価を受けることになる。直示できる確定記述句にはこの2つのルートがある…みたいな話?2024/07/30