出版社内容情報
仏教は長い歴史のうちに独自の美術をはぐくんだ。仏塔崇拝から仏像の成立,そして仏像崇拝へといたる過程がその中心である。本巻は美術の変遷の背後に仏教の理想を探る。
内容説明
ガンダーラ・アジャンター・敦煌などの美術作品に表現された仏教の理想を、思想史研究の視点から解明する。カラー口絵ほか写真多数(丸山勇撮影)。
目次
序章 仏教美術の思想的背景―美術を通して思想に
第1章 ストゥーパ崇拝
第2章 霊場巡礼
第3章 仏像崇拝のはじまり
第4章 ガンダーラ美術とマトゥラー美術
第5章 仏像崇拝の諸相
第6章 グプタ王朝時代(サールナート派)の仏像
第7章 グプタ王朝以後の美術
第8章 南インドの美術
第9章 仏像を拝む
付篇1 アジャンター壁画を通して
付篇2 ヒンドゥー建築のめざすもの―天にそびえる塔
付篇3 中央アジアにおける仏教美術の特異性―覚え書き
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
月音
3
仏教が理想とする教えや、抽象的な観念を具象化するとどのような表現をとり、形となるか。本書はブッダの舎利信仰から偶像崇拝に至る歴史をたどり、仏像発祥の地ガンダーラとマトゥラーを中心に東西の経済・文化交流、異宗教との混交によって発展・変化していく思想を仏像・仏教遺構から読み取っていく。要点が絞られた簡潔な論述は非常にわかりやすく、折々挟まれる現地調査中のエピソードや私的な感想、余話は著者の人柄が髣髴とされ、普通の学術書にはない親しみやすさがある(実際の祇園精舎には鐘がなかったらしい!とか)。⇒続2024/12/24