出版社内容情報
男女合体尊や秘仏などエロスやグロテスクに関する仏教美術の解説を通して、それらの図像全体を貫く普遍的な美意識や人間観を明かす。
【著者紹介】
1962年、滋賀県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程在学中に、ロンドン大学大学院留学。ロンドン大学よりPh.D.(哲学博士)を取得。高野山大学助教授を経て、現在、金沢大学文学部教授。専門はインド・チベットの密教儀礼と図像学。
内容説明
禁欲のなかのエロティシズム。聖なるもののなかの不気味さ。インドと日本の仏教美術のなかから、エロスやグロテスクとかかわりのある図像をとりあげ、それらを通して各地域・時代に固有の文化を知るとともに、全体を貫く普遍的な美意識や人間観を明らかにする。
目次
第1章 仏教は豊穣神から生まれた
第2章 愛を交わす恋人たち
第3章 僧院の中の女と男
第4章 説話文学と性のモチーフ
第5章 過剰な性がもたらす恐怖
第6章 安産法をめぐる考察
第7章 愛欲の弓矢
著者等紹介
森雅秀[モリマサヒデ]
1962年、滋賀県生まれ。1990年、名古屋大学大学院文学研究科博士課程後期課程退学。1994年、ロンドン大学大学院修了。Ph.D.(ロンドン大学、1997)。名古屋大学文学部助手、高野山大学文学部助教授等を経て、金沢大学人間社会研究域教授。専門は仏教文化史、比較文化研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
13
樹と女性、遺跡における男女の彫像や密教の神々といったもののイコノロジー、そしてサンガ内部の男女問題、一角仙人の説話と性など一つの話題だけで論文一つ書けるような話題を豊富に説いていて、非常に面白く読めた。図像も豊富に用意されていて、まさに痒い所に手が届く出来。ただ個人的に不満なのは立川流を是非とも入れて欲しかったのと、歓喜仏を完全にスルーしているところ。特に歓喜仏は以前ネパール旅行で目にして仰天したので、是非とも詳しい背景を知りたかった。2012/04/13
きいち
8
夜叉・弁天・聖天・愛染明王などなど古代インド以来の膨大なイメージ、それに戒律にあるという蓮華色比丘尼の凄絶な人生やヤギとのハーフの純情な一角仙人の話といったエピソード群、エロスをキーに行ったり来たり、本当に圧倒的。でも、その時点で生きてる人の見たい・聞きたい気持ちに寄り添って記述していってくれるので、追いかけ甲斐がありました。ああ、仏教ってそんな気持ちを禁圧しないから親近感もてるのかな。2012/02/01
梟をめぐる読書
6
タイトルを見て「おっ」と目を止めた方。オススメです。元来、仏教美術にはストイックなイメージがあり、このような視点から論じられることは殆どなかった。ところが実際の作例を見てみると、腰飾りだけを纏った女陰も露な女性像あり、奇怪な体位で交わる男女の彫刻あり……(第二章「愛を交わす恋人たち」)。しかしそのあまりにも過剰な性の放埓は、やがてグロテスクの様相を呈していくことになる(第五章「過剰な性がもたらす恐怖」)。この後も話はインドラや「愛欲の弓矢」を巡って続いていくのだが、正直ここまでだけでもお腹いっぱいです。2011/11/07
in medio tutissimus ibis.
4
仏伝のレリーフに登場するヤクシニー、樹木と女性のイメージの根深さ。ミトゥナ像に見る古代インドの高貴な女性の服装と、男女の従属関係の変遷。蓮華色比丘尼を中心に律蔵から浮き彫りとなるサンガ内の性の実態。一角仙物語における降雨と性行為のイメージの変遷。仏の陰馬蔵相に纏わる過剰な性の恐怖。インドラから仏陀、普賢菩薩に至る「生命を与える」象の系譜。愛染明王、弁財天、ダキニ、聖天等の日本における受容と発明。エログロ抜きにしても面白い話が豊富かつ多岐にわたるが、残念ながらここに記すには余白が狭すぎる。元は講義録らしい。2018/03/30
三毛猫座(みけ
1
ここまで直接的な表現の像や彫刻があることをあまり知らなかったので、面白い。ただ、日本のことがもっと多かったら良かった。2015/08/15