内容説明
本書では、ヨーロッパに伝わる吸血鬼伝承と、それが発生する背景となった東欧の歴史をふり返りつつ、19世紀から今世紀にかけて創作に表れた吸血鬼たちを検証、それはまさに民間伝承として生きつづける事実であることを証す。これは、多数の珍しい写真と図版を満載した「吸血鬼小事典」でもある。
目次
第1部 吸血鬼の悪魔学(「ドラキュラ」は歴史上の人物だった―ワラキア公ヴラド・ツェペシュの生涯;もう一人の「吸血鬼」血まみれの伯爵夫人―エリザベート・バートリーの生涯;よみがえった死者たちの記録―早すぎた埋葬の恐怖;カンニバリズムと血の祭祀―共食いの思想・いけにえの思想;吸血鬼紳士録―吸血鬼文学案内;吸血鬼シアター―吸血鬼映画と吸血鬼俳優)
第2部 吸血鬼の民俗学(吸血鬼の誕生―起源とふるさと;いけにえを求める神々―ヨーロッパ世界の血の信仰;吸血鬼伝承の発生―よみがえる死者と死の恐怖;「ドラキュラ」の民俗学―フィクションの吸血鬼と民間伝承;吸血鬼退治―魔よけと埋葬の方法)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
めがねまる
17
タイトル通りドラキュラに焦点をあて、史実のドラキュラ公の半生と吸血鬼的な人物、吸血鬼信仰の土壌となった事件や伝承をコンパクトに紹介する入門書。第一部はドラキュラ、第二部は伝承の吸血鬼、と内容が分かれており、民俗学的なアプローチの第二部が特に興味深かった。知っていることが多いのでおさらいとして読んだが、モノクロながらルーマニアの風土を伝える写真がちょこちょこあり目にも楽しい。2018/05/28
サイバーパンツ
6
吸血鬼は人々の「死」や「屍体」などに対する恐怖から来たもので、そこから文学や映画などの吸血鬼ホラーが生まれた。最近、自分も含め、あまりホラーを怖いと思わず、冷めた目で見る人が多いのは、科学の進歩で「死」や「屍体」と触れる機会が減り、それらを未知なるもの・不気味なものに思えなくなったどころか、意識することすらなくなったことで、そのような恐怖が分からなくなったからかもしれない。そう思うと、名状しがたい恐怖を純粋に感じることができた中世ヨーロッパの人々が少し羨ましい。2016/01/12
ゆぽんぬ
5
ヨーロッパに伝わる吸血鬼伝承の、それが発生する背景となった東欧の歴史を振り返りつつ、吸血鬼を検証。吸血鬼の悪魔学、民俗学、歴史、誕生、伝承の発生、創作……多方面から分かりやすく説明されていて、面白かった。2021/11/05
とーとろじい
3
土葬はよそう、チェケラドラキュラ。 血を与えて先祖の霊や神に感謝する、その儀式には地域によって過激な、血なまぐさいものがあると。豊穣を願うために川に女を捧げて結婚(妊娠)させるって発想は凄いなと。祭礼で首切られるのも女で、吸血されるのも女っていうのは、ジェンダーだなぁ。種をいちいち数えたり網目を数えたり、昼は太陽が当たらなくても動けなかったり吸血鬼は弱点がかわいい。民間信仰において恵みをもたらす霊が、待遇に落ち度があったり供養をしなければ反転して、襲う霊になる。信仰制度の盲点な気がするが。2018/10/16
紫
2
1992年刊行。タイトルは『ドラキュラ学入門』ですが、どちらかといえば『吸血鬼学入門』といった内容なのであります。吸血鬼のモデルとなった、ヴラド・ツェペシュ、エリザベート・バートリの略伝。小説や映画の中の吸血鬼。吸血鬼信仰の起源?のような宗教祭祀や民間伝承等々、広く浅く、吸血鬼にまつわるさまざまなトピックを紹介。フィクションと民間伝承の吸血鬼像の違いも細かに述べられており、吸血鬼の基礎知識を押さえておくにはちょうどいいレベルではないでしょうか。星3つ。2022/04/03