感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫丸
13
江戸川柳は当時のあるある感を表出したものか。特定の職人は特定の所作をする、遊里岡場所には地域ごとの客層が対応する、嫁姑などの人間関係には典型的な感情が付随する。わかりやすい社会だけに、少々の穿ちを添えて共感を異化する芸術である。個人的に秀句と見えるものを挙げる。「香の物へし折って食ふ一人もの」豪快な気味だが、そもそも漬物を切るのも面倒な独身男。「今頃は灰になったと灯籠(とうろ)を見」灯籠は秋の吉原名物。葬式後に吉原へ繰り出して精進落とし。「朝帰り母は裸足で二三間」親父に先んじて急いで息子を出迎える母。2022/03/31