内容説明
乱闘、強行採決、選挙違反にみちている日本の議会政治と比べて、一九世紀以来のイギリスの議会政治は、模範的なものであったように思われている。はたして、本当にそうだったのだろうか?女王がやたらに政治に介入し、また、採決のときに党員が分裂して四政党、五政党の政治の如き状態を示すなど、必ずしも模範的ではなかったのである。本書は、それらの問題をグラッドストン、ディズレーリ、ヴィクトリア女王の三人の絡み合いを中心に、人間味と人間臭さとを加えて述べたものである。
目次
1 表舞台に出るまでの三人(奴隷所有者の子、グラッドストン;ユダヤ人ディズレーリ ほか)
2 自由主義の戦い(三人が結婚するまで;自由貿易への歩み)
3 保守党の暗い谷間(不安定な連立内閣つづき;自由党員グラッドストン)
4 立憲政治の絶頂(第一次ディズレーリ内閣;第一次グラッドストン内閣 ほか)
5 グランド‐オールド‐マン(グランド‐オールド‐マン)
著者等紹介
尾鍋輝彦[オナベテルヒコ]
1908(明治41)年、東京に生まれる。東京大学文学部西洋史学科卒。お茶の水女子大学名誉教授。現代史と歴史理論を専攻。1997年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ジュンジュン
4
グラッドストンを軸に、ライバル・ディズレーリと主君ヴィクトリア女王を絡めて19世紀イギリス史を通観する。お蔭で、生真面目で頑固なグラッドストンの個性がより際立つ。選挙権拡大や自由貿易推進を実行しながら、社会政策には消極的なグラッドストン。外に帝国主義を推し進めるも、内にあっては労働者擁護の社会政策を推進したディズレーリ。対照的な両雄ともに時代の寵児だったと思う。2020/04/18
あらい/にったのひと
1
原著は71年なので50年以上前の本ですね。イメージとしては新書、もしくはジュニア新書あたりでしょうか。書き方が意図的に年代順かつ並列して書かれているので、読み手にある程度内容整理が求められるかも。ただ、そこが著者の書きたかったことのようであり、その整理という体験によってグラッドストンやディズレーリの立場や判断に思いを致す、というコンセプトだと思われます。いい本ですね。2024/07/15