内容説明
一四世紀から二〇世紀の初めにかけての西アジアの歴史は、オスマン帝国の動きを中軸として展開された、といっても過言ではない。ことに一五世紀から一六世紀は「トルコの世紀」とよばれるほどなのである。しかし従来のヨーロッパ中心にすぎた世界史の中で、トルコやイスラムの社会・文化はいわば付け足しの感をまぬがれなかった。本書は、アジア・ヨーロッパ・アフリカにまたがる雄大なイスラム帝国の支配者であるスレイマン大帝の人物と業績を通して、一六世紀の世界史のうち東洋と西洋をつなぐ中間帯の歴史の空白部をうめた画期的な書であるといえる。
目次
序章 イスラムの世界
1 世界の帝王(オスマン帝国の出現;スレイマン時代の到来 ほか)
2 世界制覇への夢(最初の試練;西方への触手 ほか)
3 世界のトルコへ(東進と南進と;最後の遠征)
4 スレイマンの世界(トルコ帝国の内幕;イスタンブールの繁栄 ほか)
著者等紹介
三橋冨治男[ミツハシフジオ]
1909(明治42)年、東京に生まれる。慶応義塾大学文学部東洋史学科卒。外務省調査部嘱託、明治大学助教授を経て、千葉大学名誉教授。この間、東京教育大学・慶応義塾大学・信州大学講師、東京外国語大学A・A研共同研究員を歴任。1999年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ジュンジュン
6
今でこそ多くのイスラーム史の関連本が出版されているが、学生だった当時(四半世紀前)は三橋氏の著作がほとんど唯一だったので、とても懐かしく読めた。オスマン帝国の最盛期を現出させたスレイマン大帝、その光と影をコンパクトかつ分かりやすい。2020/04/26
みこ
1
スレイマンの時代までオスマン帝国は拡大を続け、それ以降の時代は拡大を止めてかつスルタンではなく内部の勢力争いが続く時代に入る たしかにスレイマンは時代の後押しもあって最も輝かしい時代を築き上げただろう、しかしそれは同時にオスマン帝国を変えてしまった時代とも言える しかし、結局変わったあともオスマン帝国は300年近く続く、むしろここで変わらずに拡大路線をとっていたら困窮して内部から崩壊していた可能性もあるだろう 個人的には、中世時代の蝶番となった人物であったと評価したい2023/03/13