感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tomozuki Kibe
2
50年前の書だが簡潔でわかりやすい。好きなものは女と子供と香料。割とお洒落で勤勉な中年男が原始宗教しかないアラブに一神教を持ちこむ。といっても彼の思想もぼんやりで、ユダヤやキリスト教徒の対立で成長。「啓典の民」というのもろくに読んでいない聖書の中を「一神教だから同じ中身だろう」と類推していた概念らしい。クライシュ族がカーバで管理するアッラーを長とした多神の偶像に対する挑戦は、クライシュの権威破棄のみならずメッカ社会そのものの崩壊につながる。ところで塹壕がアラブで掘られたのはこれで最初、て原始的な戦なのね。2024/09/10
富士さん
2
ワタシのイスラム理解の基礎となった名著、再読。訥弁で、仕事をちゃんとして、子供が好きで、家事は自分でやり、いい女やうまいものが好きで、理不尽や不正義にはことのほか敏感な普通の人。そして、神の言葉を預かった以上に、仲間を危害から守り、仲間を食べさせるために実際に手を汚して働く、まっとうな社会人であったという本書の示すムハンマド像はとても魅力的でありました。弱い仲間を死へと駆り立て、心地いいものを心地いいと言うことを禁じる者たちが、自らを根源的に継いでいると言うの聞けば、彼は当惑し、怒りを感じるに違いない。2016/05/30