出版社内容情報
岩淵 達治[イワブチ タツジ]
著・文・その他
内容説明
シュニツラー(一八六二~一九三一)は、森鴎外の『恋愛三昧』の翻訳などで早くから知られ、大正時代からたびたび上演されたので、古い世代にはまだファンも多い。戦後はその人気も下火になり、その名も忘れられかけていたが、最近の世紀末のブームとともに再び注目されるようになってきた。しかしシュニツラーを、社会性をもたない、愛と死とエロスの作家と考えるワンパターンの先入観はいまだに全く改まっていない。社会問題と対決した作品の紹介が、当初から欠落していたことがいまさらのように思い知らされる。彼の作品がいかに十九世紀末から二〇世紀初めのウィーンの社会的諸問題と対決していたかという側面も明らかにした。
目次
1 愛と死の主題(シュニツラーとその時代;出世作『アナトール』;エロスと死の作家;エロスの戯曲『輪舞』)
2 三つの自然主義的社会劇(婦人問題のテーマ―『メルヘン』;決闘のテーマ―『野獣』(禁猟期なしの獣)
社会の非人間性への批判―『遺産』)
3 多彩な作品群(一幕物のチクルス;近代小説の試み―『グストゥル少尉』;短篇小説と一幕物会話劇;異色の歴史劇;心理会話劇の傑作)
4 ユダヤ人問題をめぐって(『自由への道』と『ベルンハルディ教授』)
5 晩年のシュニツラー(第一次世界大戦の勃発;不遇な晩年)
著者等紹介
岩淵達治[イワブチタツジ]
1927(昭和2)年、東京に生まれる。東京大学文学部独文科卒業。現在、学習院大学名誉教授。この間、ミュンヘン大学、ベルリン自由大学に留学。専門はドイツの演劇、映画、現代文学。劇作、演出活動にかかわる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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