内容説明
美麗な衣装、長い黒髪、平安の貴族たちの絵巻は日本文化の雅のルーツとして現代人たちに果てなき夢、憧れを誘ってやまないが、宮廷社会の実態は厳しく、それほど美しくもなく雅でもない。表面が華やかであればあるほど、その内部に沈潜する人間の暗部、不断の苦悩や悲しみ、不条理なども際立ってくる。絶えざる権力闘争も激しい宮廷社会の渦中にあって、様々な人間の実相を常に冷静に、聡明な知性と涼やかな視線をもって見つめている女人があった。紫式部と呼ばれる宮仕え女房である。時の権力者藤原道長の娘、中宮彰子に仕え、宮廷生活の現実を見据えながら、孤独なわが魂を燃焼させるかのようにあの源氏物語を創出した人。彼女の歩み、心象世界を虚心に辿ることにより、その創造のエネルギーの原点を探り、混迷した現代に生きる我々の精神の糧としたい。
目次
第1章 紫式部と宮仕え(宮仕え女房紫式部;宮仕えへの道のり;源氏物語の執筆;同僚女房たちとのかかわり;主家の人々とのかかわり;自照・述懐)
第2章 源氏物語の世界(青春の碑;没落、そして栄光への道;暗転・愛と罪と死;宇治の浄光)
第3章 美意識・思念(華やぎ、やつれ;自然と人間)
著者等紹介
沢田正子[サワダマサコ]
1944年(昭和19年)、東京生まれ。東京教育大学大学院文学研究科(日本文学専攻)修了。東京教育大学・筑波大学助手、静岡英和女学院短期大学講師・助教授・教授を経て、現在静岡英和学院大学教授。平安女流文学専攻
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。