Century Books 人と思想 160<br> 悲劇と福音―原始キリスト教における悲劇的なるもの

Century Books 人と思想 160
悲劇と福音―原始キリスト教における悲劇的なるもの

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  • サイズ B6判/ページ数 186p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784389411602
  • NDC分類 192
  • Cコード C1316

内容説明

人の心をゆさぶらずにいない「悲劇的なるもの」という要素は、原始キリスト教の成立と発展にいかに関わったか―。小書はまず、アリストテレス『詩学』を手がかりに、「悲劇的なるもの」の基本的条件を探り、それらの要素を最古の福音書マルコに適用する。マルコこそ、最も「悲劇的」な内実の福音書である。同要素は、さらにキリスト教最初期の事件そのものにも適用され、イエスの死後のエルサレム原始教会の誕生、および使徒パウロの事柄把握が、「悲劇的」感性の展開した姿として把握される。「悲劇的なるもの」との出会いこそ、後に「キリスト教」として発展する運動の母胎であった。原始キリスト教は、悲劇に遭遇した者たちの心の軌跡として読み直すとき、思いがけない生々しさで甦る。

目次

第1章 文学作品における「悲劇的なるもの」(「悲劇的なるもの」とは―アリストテレス『詩学』より;悲劇的文学作品の定義)
第2章 原始キリスト教における悲劇的文学の造形(マルコ福音書;前マルコ受難物語)
第3章 最初期の原始キリスト教における「悲劇的なるもの」の発現(歴史における「悲劇的なるもの」;イエスの十字架事件;パウロ)
第4章 原始キリスト教における「悲劇的なるもの」の衰退と残存(パウロ的潮流において;福音書において;非悲劇化されえぬもの)
結論―悲劇的なるもののキリスト教的意味

著者等紹介

佐藤研[サトウミガク]
1948年(昭和23年)福島県生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。現在、立教大学教授。この間、スイス・ベルン大学にてDr.theol.(神学博士)学位取得。著書に『旧約新約聖書時代史』(共著)ほか。翻訳に『マルコによる福音書』・『マタイによる福音書』・『ルカによる福音書』(翻訳特別功労賞受賞)ほか
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

松本直哉

20
供えた花が萎れれば取り替えるようにして、月日の流れに逆らって悲しみを常に更新して生々しいままに忘れないことこそ、あすへ踏み出すためのよすがとなる。イエスの逮捕に逃げ出した罪責感と師を喪った悲しみのなかで成立したマルコ福音書は、当初埋葬の場面で終っていたという。弟子たちが死をしのび自分たちの中にその現実を落とし込む喪の作業のためにはそれで十分だった。ほかの福音書が復活や昇天や栄光の物語を付け加えるにしたがって「非悲劇化」されていく過程は、悲しみが薄れるにつれて硬直した教義が成立する過程でもあった。2019/07/06

endormeuse

2
「イエスの十字架上の惨死」という悲劇に触発された現象として初期キリスト教運動を読み直す一冊。センチュリーブックスにラインナップされているのは謎だが、おもしろかった。2020/11/03

ぼけみあん@ARIA6人娘さんが好き

2
アリストテレスの詩学で述べられている悲劇の枠組みに照らしてみても、最初に書かたマルコ福音書が悲劇としての性格を持っていると分析。その悲劇性が他の福音書などにどのように承け継がれ、かつ否定されてゆくかを丁寧に跡づけている。中々興味深く色々と啓発される内容だった。ただ、何が原因かちょっと読みづらく、読み終わるまで意外と時間がかかってしまった。拾い読みでもよいから、とにかく再読が必要だな。2012/11/16

ヴィトゲンシュタインの猫

1
【『福音書』/『悲劇』】ソフォクレスの『オイディプス王』と使徒パウロの再構成意味を把握、福音と悲劇の定義を矛盾することなく総和を説いた。よって古典ギリシャ文明史/新約キリスト教の成立を再刷新する。「福音」の定義を再考、預言を七十人訳旧約聖書系譜としたのではなく預言者エゼキエルの預言記録を集合化させられる。旧約聖書における論考意味を『悲劇の誕生』、または『ツァラトゥストラ』は復帰させた。新約聖書は旧約意味を内包、ギリシャ史実復帰はグノーシス手段を殲滅していく。『ヨハネ福音書』の生命と肉体は「復活と十字架」。2014/05/24

おちゃお

0
福音の発展云々よりも、悲劇とはなんたるかを定義しそれに則って展開させていくところが面白い。2015/12/14

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