内容説明
マルセル・プルーストはフランスの十九世紀末から二十世紀初頭のベル・エポックに生きた作家で、フランスの歴史の中でも最も優美な時代の空気を吸いながら、『失われた時を求めて』という唯一の作品を書き上げることに一生を投じた人物である。彼の書いた作品は、当然にも優雅で美しい。けれども、十九世紀末の象徴派のような、過去を感傷的に喚起している作品だと考えるならば、これほど間違った想像はないだろう。この作品は全体としてはきわめて健全に力強く前進していく。その結果として最後に得られる世界は二十世紀にふさわしい輝かしい美の世界である。
目次
第1部 プルーストの生涯(幼年時代;リセ時代;青年時代;創作の時代)
第2部 プルーストの作品と思想(初期の作品;『失われた時を求めて』)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
LUNE MER
16
「失われた時を求めて」の解説本は何冊か読んだが、プルースト自身の生涯については本書の記述が最も充実している。徒に美化することなくかつ暴露趣味に陥ることもなく、というスタンスでの記述であるが…率直に言って、「多様性」という価値観の下で受け入れられるべき範疇からは逸脱していると断じたくなる人物である、プルーストは。しかし、その作品は愛してやまない。彼が「サント=ブーヴに反論する」で主張したかったことは正にこういうことで、「私を評価するならあくまで作品を通じて見てくれ!」ということなんだと思う。丸め込まれた気分2022/05/08
ゆるり
0
前半部プルーストのエピキュリズミックな伝記。間に失われた時を求めてのあらすじが数頁。後半は彼の作品の歩みと構成。彼の作品は、土地を軸にしている。彼の文体は花丸のように、ある事柄を囲むように修飾しながら続けられる。2012/02/26