内容説明
シュニツラーを、社会性をもたない、愛と死とエロスの作家と考えるワンパターンの先入観はいまだに全く改まっていない。これは世紀末というときに自然主義を全く欠落させるパターンと通底している。シュニツラーについても、彼の社会問題と対決した作品の紹介が、当初から欠落していたことがいまさらのように思い知らされる。もちろん、愛と死とエロスの作家であることも事実だが、彼の作品がいかに世紀末から今世紀初めのウィーンの社会的諸問題と対決していたかという側面も、本書で明らかにしたい。
目次
1 愛と死の主題
2 三つの自然主義的社会劇
3 多彩な作品群
4 ユダヤ人問題をめぐって
5 晩年のシュニツラー