内容説明
本書は、ファウルズ最初の、またこれまで唯一の短編集である。表題作「黒檀の塔」はまさしくもう一つの『魔術師』であり、その「変奏」である。二十世紀の絵画史を辿りながら次第に深い混迷に沈み、様々な謎を提示するファウルズ一流の中編「黒檀の塔」ほか全5編を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
きゃれら
20
ジョン・ファウルズ巡りもこの1冊でひと段落。ほかのは、地元の図書館にはない。唯一の短編集だが、一部を除いて非常に手ごわい作品ばかり。最初の表題作「黒壇の塔」は「魔術師」のリアル版とのことだが、物語の行方が分からないうえ、状況描写が非常に多く読みにくい。最後の「雲」に至っては視点の急激な変更、意識の流れ、などが駆使され超難読。読みやすいのはミステリー仕立ての「謎」だが、この人らしくそれこそ謎を残して終わってしまう。面白かったとは言いづらいが、読んでよかったとはいえる。でももう戻ってこないかな。2025/10/26
棕櫚木庵
19
中・短篇5つを納める.二つ目の「エリデュック」は,作者の長い「個人的な覚え書」を付して,マリー・ド・フランスが語った物語を再話したもの.一読,なんとまぁ,男に都合のよい話だ,と思った.訳者解説によれば,「マリは彼[ファウルズ]が考えるより時代の因習とキリスト教によっており,[ファウルズは,]彼の女性に対する高い評価にかかわらず,不実な男の肩を持ち過ぎているのではないか」との指摘があるとのこと.マリーの語る物語を岩波文庫で読んでみた.2021/02/08




