内容説明
荷風は赤レンガ建築が嫌いだった…あるべき“景観”とは何か。荷風を通して明治の東京の成り立ち、現代の東京を考える待望の本。掲載図版約80点。
目次
序章(景観問題の起源;建築・都市批評の始まり)
第1章 明治(一八六八~一九一二年)の首都計画(江戸を近代首都に―欧米化の志;外国人技術者の時代―銀座煉瓦街計画と官庁集中計画 ほか)
第2章 荷風の欧米都市体験(渡米以前―江戸と東京の狭間;渡米後(一九〇三~〇七年)―シカゴ、ワシントンD.C.、ニューヨーク:近代都市のスケール ほか)
第3章 荷風の体感した首都東京(「明治の東京」の衝撃―帰国後(一九〇八年)から『日和下駄』(一九一五年)まで
首都の威信―丸の内・日比谷・霞ヶ関界隈 ほか)
第4章 荷風の好む東京の景観(建築―「市区改正」以前・以後:西洋建築二世代;街路―大通り、路地、坂道:景観と歩行感覚 ほか)
終章 心地よい都市をめざして(「国土」から「風土」に;点の集合体から四次元の構造体に ほか)
著者等紹介
南明日香[ミナミアスカ]
1961年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、同大学大学院文学研究科博士課程満期退学、Ph.D.(フランス国立東洋言語文化研究院)。相模女子大学学芸学部教授。専門は日仏比較文学・比較文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kthyk
17
「東京は醜い」と言う言葉から始まるのはユニーク。題名の通り、永井荷風が批判し、好んだ都市景観の集大成。内容は都市計画者やデザイナーではないだけに、返って興味深くユニークだ。文化景観感覚、シティビューティフルな空間像、ヴァンダリズム(公共物破壊)遊歩者フラヌール、淫祠東京趣味。オペラでは体験あるが、まだ一度も訪れたことのない街。ローデンバックの小説「死都ブルージュ」。「すっかり寂れてしまった運河の街、この街に住む亡妻の面影を忘れずにさまよう男性の生涯と重ね合わせられ、哀切きわまりないイメージを醸し出す」。2021/05/30
とみやん📖
8
何せ、一世紀も前の首都を題材としており、隔世の感がある。市区改正により、日本らしい景観(曰わく、水辺、草木、白壁、風月など)がなくなるのを呪詛した荷風の主張を、その前半生を追いながら検証している。良家出身で明治の時代から自費で欧米に行けたというバックボーンが一番大きいと感じる。荷風の主張も著者の主張も何となく分かるが、国家国民への責任を負う当時の為政者への共感が勝る。変化の大きい我が国には避けられない命題か。あれほど、荷風が嫌った赤煉瓦や偽欧風をむしろ現代では賛美、復古しているのも皮肉を感じる。2018/06/18
yooou
2
☆☆☆★★ 題材もアプローチも非常に良いものを持ちながら、やや踏み込みが足らない気がしました。2010/02/25
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