内容説明
ミクロネシア島民とともに15年同じ棲家に住み、同じ食べ物を食べ、同じ南の時の流れに身を委ね、絶大な信頼を承けながら、サテワヌ(サトワヌ)島民の生活を克明に記録した不滅の遺産。絶海の孤島の記録。
目次
サテワヌ島へ
黄永三の変死
島の禁食・禁区
雨止め呪祷
風邪呪祓
パニバヌ人形
踊りじまい
手紙
近親禁言
椰子の儀式・毛の民俗
分配・供出
島語の発音
宇宙
自殺
氏族の系譜・父系関係
交易
アヌーの儀式
森
時の流れ〔ほか〕
感想・レビュー
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てれまこし
2
日本人の自画像は他者像を通じて作られるものとしても、比較の対象を北方にとるか、南方にとるかで、また違った自画像が描ける。日本の統治下にあった南洋諸島に住む人々にとっては、東西文明の相克やら大国の競合なんて「上部構造」なんてない。そんなものは社会の分業が進んで、文字だけで飯を食う階級が現れないと出てこない。南洋を鏡にして見えてくるのは、国家や文明の層に埋もれて見えにくくなった生活のゼロ地点である。柳田民俗学が掘り起こそうとした常民の世界である。無意味な享楽を増やすために馬車馬のように働く現代人の矛盾である。2018/05/02