目次
現代の荒野から
奇病
伝統と変遷
暮しの環
人間の破壊について
怨の旗
裁判
ついに面と向って
カナダ―地球の裏側
再び故郷へ
水俣病関係年譜
水俣病―医学報告―その歴史と解説
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
220
ジョニー・デップが新作「MINAMATA(原題)」で写真家ユージン・スミスを演じるということで、手にしてみました。水俣病の始まりから、認定への苦闘、裁判の混乱、終わりなき補償へと見事にまとめられた名著です。報道写真・記録写真・肖像写真・風俗写真として、心に深く刻み込まれます。1975年にスミスが書いた序文に「毒が水銀であれ、石綿であれ、食品添加物であれ、放射能であれ、またそれ以外のなんであれ、日に日に我々の上に迫っている」とあります。環境問題について語る時に、日本人とて目を通しておくべき一冊だと思います。2021/04/29
アキ
88
映画「MINAMATA」でW.ユージン・スミスを演じたのはジョニー・デップ。プロデュースも行い、工場排水による環境汚染について住民の訴え、会社の否認、裁判での補償、報道の意義をうまく映し出していた。絶版となっていたこの写真集も、映画の公開と共に2021年復刻版が出版された。「LIFE」に掲載された1956年生まれの上村智子を母親が入浴させている写真。写真は、たった1枚だけでひとの心に届く小さな声である。2021/10/08
燃えつきた棒
52
長い間、「ミナマタ」に向き合うことができなかった。 見ることが、怖ろしかったのだ。 だが、ついに向き合うべき時が来たのだ。 たとえ、どんなに鬱の穴でもがこうとも。 今、この本と向き合わねばならない。 なぜなら、これはユージン・スミスの遺言なのだから。 「ミナマタ」は、日本であり、世界であるのだから。/ すべての国家は嘘をつく、いわんや営利企業をや。 「構造」とは何か? 「ミナマタ」から見えてくる一つの「構造」があるのではないか? 原発村の真っ只中で『青白き光』を歌った佐藤祐禎の孤独に想いを馳せる。/2020/10/25
かんらんしゃ🎡
44
★ジョニーデップの『MINAMATA』を見る前に写真集を見ておこうと。10代のころ、猫が躍り狂い自殺するドキュメンタリを見て水俣病を知った。企業は実態を隠し、国も弱者に寄り添わない。企業城下町ゆえ住民も二派に別れ対立する。★ユージン・スミスは報道人でありながら患者側に立って写真を撮っていく。チッソとの闘争の記録だ。p13の魚の白さが印象的だし、入浴の写真も迫ってくる。ただ総じてアングルが高くて溶け込みきれてない印象を受けた。★チッソ水俣の構造は原発依存の地方と同じだし、温暖化は地球規模で現在進行中だ。 2021/12/19
hrmt
32
図書館本。素朴で明るく、慎ましくとも自然と共にある豊かな暮らし。写真にうつる患者やその家族、闘う人たちの後ろに、そんな風景が見えた気がした。幻のようなそれは、水銀に蝕まれなければ何の苦もなく手に入る現実の生活だったはずだ。チッソによって町は栄えたが、代償ともいえる病を抱えそれでも「8割は憎しみだが、残りはたぶん愛情だろうな」と言える人々の善良さ。恨みも愛も共に海のように深い。映画を観るために手にした本書だったが、生を切り取った写真が訴えかけるその圧倒的な現実は、映像をはるかに超えて私を揺さぶるものだった。2021/09/29
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