感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
23
読みながらシモーヌ・ヴェイユの「真実は死の側にある」ということばを思い出していた。フィルダスを虐待し搾取する男たちが想像上の充溢という虚偽の世界にいるとすれば、その男たちに唾を吐きかけナイフを突き立て、自ら進んで死刑囚となる彼女が真実の側にいる。DVに耐える妻を辞めて自分で自分の体に値段をつける売春婦を選んだ彼女にはひとかけらの後悔もない。卑劣な態度で侮辱したアラブの王子の差し出した紙幣をこなごなに切り裂く場面に息をのむ。ジェンダーギャップ後進国の日本に無関係の話であるはずがない。 2020/10/06
CCC
10
どこかディストピアものっぽい感触があった。(報われないけど)恋の要素もあってか、思った以上に読みやすい。雑すぎる女子割礼のシーンが怖かった。エンタメとして消化するのは憚られるところもあるが、フェミニズムやイスラーム、文学といった文脈だけで顧みられるというのは惜しい気がする。2020/09/27
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- 和書
- 太宰治と歩く文学散歩