感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
10
7年間日本で暮らしたソビエト共産党機関紙プラウダの記者による日本人論。ところどころで鋭い指摘もあり刺激的な一冊だった。4章に分かれており、日本人の美的感覚、無宗教観、倫理観、高度成長期の社会観や身分保障制度など、ここで扱う内容は多岐にわたっている。特に、日本人が宗教の代用として美を崇拝しているという考えは面白い。美への近寄りが集団的祭儀の役割を担っているとのこと。著者は日本人のものの見方の是非を指摘するのではなく、ものの見方そのものを他文化と比較検討しており、非常に読み甲斐のある一冊だった。2016/06/14
Toska
2
ソ連時代によく読まれ、ロシア人の日本イメージ形成に多大な影響を与えた重要書籍だが、そうでなくとも一読の価値はあると思う。著者は7年を東京に暮らした特派員で、ソニーの社長にインタビューを取るかと思えば過疎の農村を訪れるなど多彩な活動を見せる。随所に様々な日本論が引用され、その中には宣教師ヴァリニャーノの報告まで含まれていて、感心してしまうほど勉強熱心。日本の文化や美意識を説いた序盤は流石にエキゾチズムを感じさせるが、倫理を扱った第3章は出色の内容。2021/07/29
ゆう
1
日本はなんとなく過去も現在も同じようなイメージでとらえることが多いのですが、たった数十年前の高度成長期はまだ現在の日本とは違うところも多々あったのだなあと。もちろん変わらないところもあって、その違いを考えるのが楽しかった。2016/07/13
Ted
0
’09年7月刊(底本’71年5月)○日本に長期滞在したロシア人ジャーナリストによる日本人論。この人物もジャーナリストをカバーにしたスパイなのだろう。一度も来日せず、日系人からの聴き取りだけで仕上げた『菊と刀』は机上の空論とは言わないが抽象的すぎて通読しづらいが、こちらは地に足が付いていて面白い。最後の章は日本の象徴でもある富士山を例に「戦争に負けたからと言ってアメリカにこんなにコケにされて悔しくないのか?」と言われているようだ。2023/12/25