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内容説明
一九四六年、スターリンのソ連は、第二次大戦末期恐れられていたドイツのV2ロケットとともに、多数のドイツ人科学者をソ連に連れ去った。隔離されたゴロドムリャ島でのロケット開発、苦悩と恐怖の日々―。ロケットの要=ジャイロスコープ専門家が明かす現代史の秘録。
目次
1 拉致された科学者たち(金の檻;第八八NII製作所 ほか)
2 ロケット開発の日々(ゴロドムリャ島;製作所第一支所 ほか)
3 ドイツへの帰還(希望と落胆;見捨てられた一六カ月;突然の帰国)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
5
第二次大戦後、ソ連占領下のドイツからロケット開発に従事していた科学者や技術者、その家族がソ連軍によって連行された。ソ連がアメリカに対抗してロケット開発を進展されるための処置だった。この本はその中の一人で、ジャイロスコープ担当の科学者の手記。ソ連の辺鄙な湖の中にある孤島で七年間もロケット開発に従事したが、常時続く監視、言動の制限、ドイツよりも低いソ連の生活水準、そしてソ連の策動によるドイツ人同士の軋轢に苦しみながらの生活(それなりに優遇されてはいたが)だった。終戦直後のソ連内部に関する貴重な証言だ。2017/11/19
ハルバルミチル
1
第二次大戦後、ソ連でロケット開発に従事させられたドイツ人科学者マグヌス博士による抑留記録。閉鎖的なゴロムドリャ島に押し込められ移動の自由もなく砂糖やバターを入手するにも一苦労、気まぐれな所長に振り回され、叛乱防止のためにタイプライターは没収、秘密主義ゆえ各セクションの意見交換は制限、なによりも拉致され軟禁され帰国の目処は不明という事実。こんなんでフルに能力が発揮できるわけもなく。適切な環境で研究を続けていたらより大きな成果を上げることができただろうに、と思う。2016/01/17
amaneshino
1
この本には3つの苦悩が登場する。一つは"収容所"の名の通り、母国に比べればはるかに劣る生活レベルだ。歯医者のシーンは聞くのも痛々しい。二つ目は"ドイツ人同士"の相互不振と争いがあったこと。ソ連はこのような種を播くことにはお家芸だったと悔しそうな文調で書く筆者の気持ちが苦しい程伝わってきた。そして三つ目が帰還という目的を見失うことに対する無気力だ。正直狂ったように"気まぐれ"にのめる描写は一番恐かった。、死に至る病とはよく言ったと思う。2010/11/25