内容説明
インパール作戦で上官に逆らって撤退を決断した佐藤幸徳、その配下で1人の餓死者も出さず撤退に成功した宮崎繁三郎。沖縄戦で大本営の方針と異なる作戦を立案・実行し、米軍を抑え込んだ八原博通。特攻を拒み、独自の作戦で戦果を上げた芙蓉部隊の美濃部正―戦争という狂気の時代に、なぜ彼らは、暗愚な上官・中央の命令に抵抗し、信念を貫くことができたのか?太平洋戦争を俯瞰しながら、4人の指揮官の決断と行動をたどる。根拠なき精神論・同調圧力・理不尽が跋扈する現代日本への教訓の書。
目次
第1部 インパール―佐藤幸徳、宮崎繁三郎の抵抗(インパールへの旅;なぜ日本軍はインパールを目指したか;インパールへの道遠く ほか)
第2部 沖縄戦―八原博通の「戦略持久」(沖縄戦までの道のり;沖縄遂に侵攻さる;入念な下準備 ほか)
第3部 芙蓉部隊の戦い―美濃部正の特攻拒否(究極の理不尽;特攻拒否を宣言;機体よりパイロット ほか)
著者等紹介
古谷経衡[フルヤツネヒラ]
文筆家。1982年北海道札幌市生まれ。立命館大学文学部卒。一般社団法人日本ペンクラブ正会員。時事問題、政治、ネット右翼、アニメなど多岐にわたる評論活動を行う。テレビコメンテーターのほか、ラジオMCとしてもメディアへの出演多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
94
前半のインパール作戦の上部の無謀さ、無責任さ、多くの兵士を死なせたこと(餓死、病死が多かった)改めてこの戦争の悲劇を知ることができた。軍部内でのプライド、派閥争い、失敗を隠すための失敗など。舞台は現在でもとんでもない難所だという。そういうところに一人30キロから60キロの装備で食料が枯渇してもなお行軍したという。今でも多くの遺骨が出てくる。当時の戦死者は浮かばれない。精神論で戦おうとする上官たち、そんな中的確な判断で後退して部下を救った人もいる。昔も今も上部がバカだと皆コケる。図書館本2025/09/26
harass
67
贔屓の作家がこんな本を出しているのを図書館で知り借りる。太平洋戦争の旧日本軍の戦いの中で、上からの無謀な命令そのままではなく、合理性を持って指揮した指揮官たちに焦点を当てる。自分は軍オタであるが、太平洋戦争は苦手。愚行の極み、インパール作戦の概要を知れた。その中で、命令無視し自分の部隊を撤退させた将官など。話には聞いていた、特攻命令に反対し、無駄死にさせない戦法をとった旧海軍芙蓉部隊も初めて読んだ。第二次世界大戦の全体の流れと戦後の違いなども簡単に解説。日本の無責任な構造は温存されたまま、と著者。良書。2022/06/10
こも 旧柏バカ一代
26
何で作戦が失敗したのか。何で彼等は生き残れたのか。インパール作戦ではとにかく司令部が敵と現場を知らなさ過ぎた結果がアレだったか。しかも相手は輸送方法を空輸に切り替えてるとか、、愚かさが。沖縄戦では最初は上手く行ってたのに中央からの再三のアホな命令で多くの人が命を無くしたとは、、ただ捕虜になる気は無かったようだから上手く行っていても結末はどうなったかは、、もっと悲惨になってたかもしれないかも?特攻はパイロットを消耗する愚かな行為で、それを命令して来た連中に赤蜻蛉を乗って操縦してみろ零戦一機で落としてやるか、2021/10/21
みじんこ
8
戦争全体を俯瞰しつつ、上層部は机上の空論で現場に無理を押し付けてくるという状況が解説され、なぜ負けたのかが分かる。一方で、現場は限られた物資や人員の中で工夫して戦っていた軍人もいることも知ることができた。芙蓉部隊についても初めて知った。インパール作戦の地が現在でも過酷であることを伝える紀行はなかなか面白い。何度か引用されている『抗命』も読みたくなった。敵に降伏するという概念がないというのは欧州戦線と比較しても極めて異常で恐ろしい。コラムでは頻出する師団や連隊とは何なのかといった解説もされており勉強になる。2022/08/18
しんさん
8
狂気の時代に正気を保つ。インパールで第31師団を独断撤退させた佐藤中将。特攻作戦を拒否し、芙蓉部隊を率いて独自の戦いを貫いた美濃部少佐。 侵略や戦争を賛美する意図は一切ありませんが、歴史に学ばなければと思う日々です。2022/08/15
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