内容説明
2歳9ヵ月で第12代清朝皇帝の座に就いた溥儀は、幼少期から女官に性行為を教え込まれ、10代半ばで宦官との同性愛に目覚めた。6歳で退位を迫られたのち、18歳の時にはクーデターで紫禁城を追われる。日本租界などを放浪し、28歳で満洲国皇帝の座に就く。終戦後はソ連軍に逮捕され、東京裁判に検察側証人として出廷。トリかごに入ったらトリになれ、イヌ小屋に入ったらイヌになれ―中国の諺のまま、数奇な運命に身を委ね、自らの欲に忠実に生きた「幻の王国」の廃帝は、周囲を不幸の渦に巻き込み、61歳で病没する。迫真の人物ノンフィクション。
目次
第1章 紫禁城の幼帝
第2章 宦官と女官
第3章 憂鬱なる結婚
第4章 流浪する廃帝と離婚劇
第5章 満洲国皇帝の光と影
第6章 后妃たちの終戦
第7章 それぞれの断崖
第8章 火龍の末期
著者等紹介
加藤康男[カトウヤスオ]
1941年東京生まれ。編集者、ノンフィクション作家。早稲田大学政治経済学部中退ののち、出版社勤務。退職後は主に近現代史をテーマに執筆活動に携わる。『謎解き「張作霖爆殺事件」』(PHP新書)で山本七平賞奨励賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
177
本書を図書館の新刊コーナーで見つけたので読みました。愛新覚羅 溥儀、ラストエンペラーを知っていましたが、彼の生涯をノンフィクションで読むのは初めてです。事実は小説よりも奇なりを体現する正に波乱万丈&峻烈な人生でした。アヘン中毒でボロボロになりながら死ぬ皇后 婉容が可哀相でした。2019/03/11
Tomomi Yazaki
18
物心つく前に皇帝となり、皇帝から降ろされる。これを3度繰り返したラストエンペラー。でもこの書を読み、感想は書きたくない。なぜならその成長過程で繰り広げられる異様な生活に嫌悪するから。拷問・虐待・麻薬・同性愛などなど。閉鎖された環境とはいえ、読んだことを後悔する程の、中国での尋常ならざる状況をつぶさに見せつけられた。その先を想像するのもおぞましく、詳細が機微に富む描写に、著者の性癖が見え隠れする。意志なく生きる悲しみの、つとに遥かな古に、霞む景色の想いは遠く、黄泉を求めよ、憐れなりけり。読了。2020/01/16
Kurara
16
★4 【19.50】2019/06/13
もちお
7
「歴史が生んだ奇形児」溥儀を表すのは表現は悪いが、後書きにあるこれがふさわしいんだろうなあ。幼く能力もないのに皇帝だなんだと祭り上げて崇めたてまつるから、おかしなことになったんだろう。皇帝になったのは不幸にも思われるが、これも運命だったのか。性生活まで赤裸々に描かれており、西太后の残酷さが描かれていたり、なかなか興味深い本だった。宦官への残酷な虐待は本人の性質もあるようなので、全てに同情はできない。東京裁判での見苦しい弁明も情けなかった。ところどころ著者の主観が入っているような記載は気になった。2025/05/06
ちい
7
『わが半生』にあった人間改造は100%本当なのか、と訝しがっていたが、これを読むと、やはりあの自伝は、中共の指針に沿って書かれたものだと感じた。裁判での証言や、三種の神器をガラクタのようだと書いた溥儀の言葉も、全て保身のためだったのだと思った。 この本では、溥儀の周囲の者の詳しい情報が載っていて興味深い。どの妻も、それぞれに不幸だが、婉容の生涯は、初めと終わりの落差が激しいだけに、特にむごい。そして、性的不能であったことや、同性愛のことも、こうして全て晒された元皇帝は、この上なく不幸だ。2023/10/08