内容説明
この素朴で実直な問いかけが、人々の心に響く。人間から「どう生きるべきか?」は消えず拠り所を強く求めるのだ。著者は1981年、哲学者・鶴見俊輔の文章で『君たち…』を知る。鶴見は「日本人の書いた最も独創的な哲学書の一つ」と評していた。鶴見自身の哲学が“一人ひとりの「私」が様々なことと出会い失敗し後悔し、そこから意味をくみ取り成長する。そこにしか哲学はない”というもので、文字通り「君たちはどう生きるかの哲学」だった。刊行後80年、いま爆発的に読まれる不朽の書を、鶴見哲学を補助線に深く丁寧に読み進める。
目次
1 へんな経験
2 勇ましき友
3 ニュートンの林檎と粉ミルク
4 貧しき友
5 ナポレオンと四人の少年
6 雪の日の出来事
7 石段の思い出
8 凱旋
9 水仙の芽とガンダーラの仏像
10 春の朝
著者等紹介
上原隆[ウエハラタカシ]
1949年、神奈川県横浜市生まれ。エッセイスト、コラムニスト。立命館大学文学部哲学科卒業後、記録映画制作会社に勤める。勤務のかたわら雑誌「思想の科学」の編集委員として、執筆活動を始める。その後、執筆業に専念(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
団塊シニア
25
吉野源三郎、鶴見俊輔に共通するのは大切なのは自分の問題を見つけること、そして作者の才能はないけど表現者として 生きたいという一途な思いが読者を感動させるコラムノンフィクションという作品を生みだしたのだということが本書から伝わってくる内容であった。2018/09/01
*
14
思想はその人の信念+態度、すなわち生活史の象徴である。ひとり暮らしをしていない頃、料理教室での私は理屈っぽいコペル君だった。しかし、自炊の経験を積んだ後には、未熟でも積極的に前に出る浦川くんになれていた。かといって、判断力や器用さは変わりなく、著者が言うような「反射」だけがあった▼無意識のうちに他者を非難する人、自分の危険を省みず庇う人、傍観する人。そこに、外から推測するほどの悪も正義もない。ただ、それまでの生活で体に染み込ませた「態度」があるのみなのかもしれない。2018/10/09
ホシ
11
昨年、話題となり、私も感銘を受けた吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』。本書は『君たち~』を一冊の哲学書と捉え、その内容を鶴見俊輔の思想を補助線にして深く読み解いていくものです。というより『君たち~』を補助線として鶴見哲学を読み解く本の方が適当かな。本書を読むとコペル君をめぐる感動が再び蘇ります。『君たち~』を鶴見哲学を介して眺めると「私たち一人ひとりが様々な出会いと失敗を通して汲み取った意味から生ずる哲学」を考えることになると私は受け止めました。2018/09/25
hozuki
6
君たちはどう生きるかを哲学者・鶴見俊輔の思想とを絡ませた本。鶴見哲学は日常の無意識を改革することから生まれます。例えば、自分にとって耐え難い罪を犯してしまったとき、次はこうしようという意識はあるけれど、日々の生活にいかせない。その時「生活術」を施します。それは信念を見える形に戒めること(悪いことをしたら謝る、体験を忘れないよう極端だが髪を丸めるなど)。ここには"過去という名の体験について繰り返し考え、その体験についての態度を決める"という姿勢があります。鶴見哲学について私は深く知りたくなりました。2019/06/04
nnnともろー
4
著者と『君たちはどう生きるか』と鶴見俊輔。高所からの哲学ではなく地に足の着いた哲学。身体に染みついた思想。人生において1人でも師と呼べる人と出会えたら幸せ。2019/06/02