内容説明
いまや資本主義は、低成長とパイの奪い合い、格差拡大という三つの矛盾を抱え、完全に行き詰まった。特に日本では、長時間死ぬほど働いても給料が上がらず、資本家による労働者からの露骨な搾取が蔓延っている。しかし日本人はそれに文句も言わず、賃上げ要求のデモやストライキをすることもない。なぜ日本の労働者はかくも鈍感なのか。経営者の多くも儲かっていない中、富はどこに吸い込まれているのか。日本資本主義の特殊性を謎解きし、搾取の構造から抜け出す方法を提示する。
目次
第1章 生活が楽でないという現状
第2章 貧しいのは自助努力不足か、それとも、世間が悪いのか?
第3章 経済成長なき資本主義の現実
第4章 トマ・ピケティの大著『21世紀の資本』から読み解く資本主義の行く末
第5章 日本資本主義の限界
第6章 企業が収奪する日本資本主義の正体
第7章 政治や国家はあなたを守ってくれるか?
第8章 防衛としてのサバイバルシステムの構築
著者等紹介
中野雅至[ナカノマサシ]
1964年奈良県大和郡山市生まれ。同志社大学文学部英文学科卒業後、90年旧労働省入省。厚生労働省大臣官房国際課課長補佐(ILO条約担当)等を経て、2004年から兵庫県立大学大学院・応用情報科学研究科准教授、10年から教授、14年から神戸学院大学現代社会学部教授。経済学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ダンボー1号
12
ラストの展望は楽観的で期待込みでしりすぼみ気味でしたが日本の資本主義の現状分析はしっくりくる。なぜ格差が見えづらい?内部留保を労働者は責められない。自分自身が将来その恩恵うけるかもしれないから。世代間格差で高齢者責められない。弱者でもあり、自分が高齢になった際の夢でもあるから。もはや規制緩和頑張ん規制崩しても成長難しい。グローバルに弱い。しょうがないとあきらめてしまう。 納得できます。2015/03/26
Arowana
10
帯に「死ぬほど働いているのにあなたの給料が上がらない理由」とありますが、同じ題材について論じられている他の様々な本にも書かれていそうな事柄はおおかた列挙されているのではないかという印象です。新書一冊で同テーマの概略がつかめるお手頃な本だと思います。2015/05/09
Humbaba
6
単純な労働の価値はどんどん低下してきている。これまでは人間でなければ出来なかったことも、技術の発達によってより少ない労力で目的を達成できるようになった。それ自体は素晴らしいことなのだが、その結果賃金格差が大きくなってしまうという弊害もある。2016/08/30
Nobu A
5
図書館本読了。官僚出身で現大学准教授が日本型資本主義を世界と比較しながら、分析・解説し、問題点を指摘。産業別でなく、企業別労働組合の構造的欠陥、企業利益の内部保留、低所得産業への人材移動等々。資本主義の根幹は設備投資と市場開拓。しかし、開拓が見込めない今後、ゼロ成長を基に考える必要性あり。目に見えないあらゆる格差、特に顕著なのは教育格差が進行していながら、国民の不満が顕在化しない歴史的心情性。腑に落ちる点が多く、とても興味深い内容。ただ、最後の将来の展望はあまりにも楽観的。読者へのリップサービス?2016/03/08
はる
5
★★★☆☆。ピケティ氏の本が話題になってるので、その流れで手に取った一冊。全くの知識ゼロで読んでみたのですが、矢張り難しかったです。笑。(^◇^;)でも、解らないながらも何となく掴める部分もあり、面白かったです。ただ、かなり極端でネガティヴな書き方をしているので体力と気力は必要です。笑。この方の言われるような考え方や生き方をしていたら、毎日辛くてしんどいですね。笑。「これまで散々ケチョンケチョンに言いたい放題言ってラストでコレかよ。社蓄って…。(^◇^;)笑。」な展開に腹が立つより爆笑してしまいました。2015/02/09