内容説明
創作華道家の跡取りとして、生まれた時から将来を決められた人生。自分に流れる血を疎み、空虚な日々を送っていた朱里は、意を決して家を飛び出し、想いを寄せる「先生」を頼って食堂“もみじ”に転がり込んだ。食堂での仕事や、“卓球場”に集うわけありな仲間たちとの交流を通じて一歩ずつ自分の人生に向き合いはじめていく。しかし、そんな矢先に先生が消息を絶ってしまい―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかだ
25
図書館で見つけて何気なく読んだ。華道家の跡取りになるべくがんじ絡めに育てられた朱里が家を飛び出し、自分で人生を切り拓いていく話。 お嬢様の生ぬるい我儘やんけ、と最初は思ったが、そこから抜け出そうともがき、少しずつ自分の力で生きていく強さを手にしていく朱里に好感を持った。先生と景子さんがホンマにステキ、というか根っからの悪者とか出てこない。皆それぞれに抱えるものがあり、やるせなくも愛おしい人々だった。自分の足で地面を踏みしめて踏ん張って生きていく、その先に人の幸せはあるものだよ、と。短い中に凝縮されていた。2024/03/20