内容説明
「アノ家は貧乏だからよ。貧乏すぎるからよ」―順風満帆かと思われた東大卒官僚との縁談に対する、「鬼婆」と言われた母からの反対。箱入りで育てられた家を飛び出した恵美子の運命は。そして、実家の会社から造反し独立した兄・貞夫を待つのは成功なのか、破滅なのか。昭和の東京・浅草。時代を駆け抜けた家族の息遣いを生々しく描く、芥川賞作家渾身の一作。
著者等紹介
高橋三千綱[タカハシミチツナ]
1948年大阪生まれ。サンフランシスコ州立大学、早稲田大学で学ぶ。1974年、新聞記事を書くかたわら『退屈しのぎ』を書き上げ、第17回群像新人文学賞を受賞。文筆専業となった後、1978年に『九月の空』で第79回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Koichiro Minematsu
37
私は物心ついた幼少期から学生時代と母親と祖父·祖母、弟の5人暮らしで貧乏だった。それで帯に『貧乏』と書かれていると目に留まってしまう(笑) 兄貞夫と妹恵美子との兄妹愛を感じる作品でした。順風満帆な人生を誰もが憧れ、苦労し手にいれようとするが、死期も近づくときに「順風満帆ではなかったが、幸せだった」と感じるんだろうなと。苦労もあり、辛いこともあり、でも今は幸せ。それが人生でしょうと思った。何も感じない幸せはないでしょう。2019/11/04
tetsubun1000mg
5
昨年著者のエッセイを読んでいたので手に取る。エッセイは酒の飲み過ぎから肝臓がんになり、書いた本は売れ行きが悪いと暗い話が多かった。 芥川賞も受賞して華やかな時代もあったが、忘れられていたような作家さんと思っていました。 本作は昭和36年を舞台に景気が良い塗料の中小企業社長の娘に、兄とその友達を中心に展開する。 お嬢様タイプの娘と独立心の強い兄とその仲間,創業社長の父親、激しい性格の母親というキャラクターで面白くならないわけがない。 久しぶりの昭和初期が舞台の連続ドラマのようでした。 なかなかの良作。2019/05/11
GOTI
4
☆☆数十年ぶりの高橋三千綱。題名とはそぐわない気がするが軽くて一気読み。自動車用塗料やパテを開発して今や業界内で確たる地位を確立している「染めQテクノロジー」の創業者、菱木貞夫の生い立ちから起業、転落、再生のドラマを妹である恵美子の目を通して描いている。社史のような小説でした。2019/05/30
ふゆか
3
あぁ。これも再読本でした💦 後で知ったが実在する会社がモデルだとか。 とにかく菱川家のお母さんの気象の激しさと言ったら…。どうしてこんなに天邪鬼なんだろうと。おっとりとした世間知らずな妹と一見破天荒な兄を中心に幼少から晩年まで綴られる。どこまで実話なのかはわからないけど、商いを営む家なら大なり小なりのドラマがあるんだろうなぁ。2022/04/21
snakedoctorK
2
急にミッチーの本が読みたくなって。 ミッチー節じゃない本でした。 そういえば、ミッチーもガンになったなぁ。それでこの本なのかしらとも思いました。2022/08/19